東南アジア経済の見通し~輸出低迷により景気減速も、インフレ沈静化で内需主導の底堅い成長へ

2023年06月19日

(斉藤 誠) アジア経済

■要旨
 
  1. 東南アジア5カ国は景気減速傾向にある。2023年1-3月期は昨年のコロナ規制の緩和やインバウンド需要の回復などにより対面型サービス業の回復が引き続き景気の牽引役となっているが、海外経済の減速により外需が鈍化、物価高と金利上昇が内需の逆風となり成長ペースは昨年と比べて鈍化している。
     
  2. 消費者物価上昇率はピークアウトして低下しているが、依然高めの水準にある国が多い。当面はエネルギー価格の低下によりインフレ率が落ち着きを取り戻し、その後もペントアップ需要の一巡や米国の利上げ停止に伴う自国通貨の減価圧力の緩和により緩やかなインフレが続くと予想する。
     
  3. 金融政策は年内に利上げ局面が終了、来年は利下げ局面に入るだろう。年内はタイが追加利上げ、ベトナムが追加利下げを実施し、来年は米国の利下げ転換をきっかけにマレーシアとインドネシア、フィリピンが景気下支えのための利下げを実施すると予想する。
     
  4. 経済の先行きは、当面は輸出低迷や金融引き締めの累積効果、ペントアップ需要の一巡より成長ペースが鈍化するだろうが、高インフレの沈静化や中国の経済再開による貿易・投資の恩恵、観光関連産業の持続的な回復により内需を中心とした底堅い成長が続くと予想する。

 
■目次

1.東南アジア経済の概況と見通し
  ・経済概況:物価高と金利上昇、外需減退により成長ペースが鈍化
  ・物価:エネルギー主導のコストプッシュインフレが和らぎ、年後半に落ち着く見通し
  ・金融政策:利上げ局面は終了、来年は利下げ局面へ
  ・経済見通し:輸出低迷により成長鈍化も、内需主導の底堅い成長が続く
2.各国経済の見通し
  2-1.マレーシア
  2-2.タイ
  2-3.インドネシア
  2-4.フィリピン
  2-5.ベトナム

経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠(さいとう まこと)

研究領域:経済

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴

【職歴】
 2008年 日本生命保険相互会社入社
 2012年 ニッセイ基礎研究所へ
 2014年 アジア新興国の経済調査を担当
 2018年8月より現職

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