坊: 私は、貨客混載で弁当宅配をするのは、難しいのではないかと思っていました。個人情報保護のため、人が乗っている時には、荷物のラベルを隠さないといけないので、実際には同時に乗せられないのではないかと思っていました。チョイソコのめしクルーの場合は、人のときは人だけ、弁当のときは弁当だけをたくさん乗せるということですか。
加藤氏: 法律もだいぶ緩和されてきているので、荷物の発送先の個人情報さえ載っていなければ、乗客とも混載できます。宅急便と違って、弁当には住所も電話番号も書いていないので、パスタ屋さんやお好み焼き屋さんの弁当が一つの袋にどさっと入っていて、それを渡すだけですから、方法はあります。
坊: 全国で、チョイソコに関心を持っている自治体は多いと思いますが、導入に適した人口や面積、事業所の分布などがあれば教えてください。
加藤氏: 人口や面積等についての条件は、あまりありませんが、住民が1,000人を切る、世帯数が500世帯を割るようなところは、チョイソコを1台入れるともったいないので、トヨタさんの「地域の足」というプロジェクトを紹介しています。地域の足は、地域でボランティア運転手を募って、電話予約で受付する乗合タクシーのプロジェクトです。ただボランティア輸送は黒字には絶対にならないですが、住民の移動手段は確保できます。
坊: チョイソコを始めてみて、道路運送法の法規制や、地域公共交通会議の関係などで、驚いたこともあると思いますが、何か規制緩和への希望や、感想はありますか。
加藤氏: 法的なところは、これまでのスキームでクリアしてきたので、特段言うことはありません。いろんな地域から、導入に向けたご相談があった時も、基本は現行の道路運送法の3つの条項、4条(定期運行)か、21条(実証実験)か、78条(自家用有償旅客運送)のうち、自治体さんの状況を見て、適当なフレームを当てはめるようにしています。
ただ、ひとつ言えるなら、先ほどから出ている貨客混載の関係で、チョイソコを使って物販の収益性を上げていけるとかなり採算がよくなるので、その条件が緩和されると良いなと思います。現行法では、貨客混載が認められるのは「過疎地」のみですが、実際には、どんな大きな市でも、例えば岡崎市や豊田市もそうですが、交通不便な山奥がいっぱいあるんです。「過疎地」という規定があいまいなので、可能なら見直して頂ければと思います。
坊: 次に、豊明市の、移動サービスに取り組む交通事業者さんへの対応について整理したいと思います。まず、行政として利用促進に協力するということがあると思いますが、先ほど早川さんから、チョイソコの車両を増やすことは、予算上の問題から当面難しいので、ダイナミックプライシングなどの手法を用いて、乗合率を上げる工夫をしていきたいというお話がありました。
次に、交通事業者に補助金を出すことに対する市としての考えを教えていただきたいと思います。先ほど私は、ニュースと移動が似ているという個人的な意見を申し上げましたが、逆に、最大の相違点は、移動には経済外部性がある点だと思います。移動サービスの場合は、輸送によって、乗客が行った先の店で買い物をすれば、店も潤う。病院へ行けば、病院の報酬が増える。サービスの受益者が、地域に広く分布するという点です。そうであれば、地域全体で、つまり行政が、公的なお金を交通事業に支出する妥当性はあると思います。
川島氏: 住民の移動手段を確保することには、我々行政の責任も必ずあると思います。もし地域から交通手段がなくなると、街がどうなるかと考えると、大変なことです。地域の持続可能性のために、交通事業者が黒字なら補助金を出す必要はありませんが、赤字なら公的負担をすべきだし、実際に、どこの自治体も赤字路線に対しては補填して、何とか移動手段を確保しています。
ただ、重要なのは負担の割合、バランスだと思うんですよね。行政が出しすぎて、運賃をただにすれば良いという訳ではなく、エリアスポンサーからガンガンお金をもらって、行政は1円もお金を出さないというのもおかしい。地域の足を守るために、住民も事業者も行政も、皆である程度負担し合っていこうよと。その結果、交通事業者さんの利益にもつながるし、住民の移動手段も守れるし、持続的な街にもつながる。
多分、その負担割合が重要かなと思うんです。行政が負担すること自体は、住民も「そりゃ妥当だよね」と思っている。ただ、その額がでかすぎると「行政が出しすぎじゃない、もうちょっと利用者からお金もらったらいいんじゃない」という話になる。例えば、コミュニティバスでよくある、運賃100円というのは、個人的には安すぎるかなと思うが、200円だったら、残りは行政が出すか、地域の企業さんからもらってもいいんじゃないか、という考えもあります。
ちょっと話がそれますが、チョイソコは企業さんから協賛金をもらっていますが、スーパーは、加藤さんがおっしゃるようにリターンが無いんじゃないか、というお話がありましたが、豊明市公共交通会議で委員から出ていた意見で、「スーパーは車で大きな駐車場を整備して、多額の固定資産税を払い、車で来る人へのサービスは手厚い。その割に、車で来られない人へのサービスは何らしていない。だから協賛金を出してもらっても、公平性はあるんじゃないか」と言ってて、なるほどと思いました。
高齢者サービスに民間の力を使う