小木津武樹・群馬大学次世代モビリティ社会実装研究センター副センター長(以下、小木津氏): まずODDの考え方についてですが、そもそも私自身は、果たして条件を一般化させるのが正しいのかな、と思っています。例えば生活道路の中でも、場所によっては歩車分離しているところも、していないところもあります。幹線道路もその逆で、実は歩車分離が十分ではないところもある、というのが日本の現状ではないでしょうか。全国の道路環境を調べても、同じようなモデルにはなってないんですよね。なので、そういう意味で、われわれも自動運転に適したODDを一般化しづらい、と正直感じています。
したがって日本モビリティも、ご相談があった場合には現地を専門スタッフが視察し、どこが自動運転で走りやすいか、個々の場所をきちんと見ながら計画を立てていくことを重視しています。
ただ、導入する上で重要なエッセンスというものはあります。1点目が「歩車分離」です。自動運転が他の様々な交通と交わるところでは、様々なリスクが伴うので、これらがいかに整えられていくかが大事なことです。
他の交通との関係でもう一つ大事になるのが、技術的な部分です。我々はGPSやレーザーセンサーなどを使っていますが、こういったセンサーが所望の機能を得やすい場所と、得にくい場所があります。これが2点目です。
3点目は、地域の方々の受け入れ、受容性が高いかどうかです。以上の三つが非常に大事な要素だと考えています。それらが複合して自動運転の難易度が決まってくると思います。それぞれの地域で、それぞれの特徴が入り混じって環境ができあがっているので、それをきちんと自動運転の視点で整理して分解してあげることで、ODDが決まってくるのです。
次に、降雪の話です。自動運転は降雪には正直、弱いです。特に降っているときが、いちばん弱い。もちろん、ブラックアイスバーンみたいに、手動で走れないときは自動運転も走れないので、それはもちろんのこと、降雪しているとき、あるいはゲリラ豪雨といったような状況で自動運転を運用していくのは、センサーが機能するか等の課題があるため、走り切れないかなと思っています。
他方、よく言われるのは、そういったところは運用でカバーするという話です。私が目指しているのは、自家用車ではなく、サービスカーへの実装なので、運行管理している方が、きちんと気象条件等も把握された上で、その日に自動運転を動かすのが適切なのか、あるいは、あらかじめドライバーさんを手配しておくのが良いのかを判断する。そういう運用面のノウハウもきちんと蓄えて、自動運転を運用していく形になると思います。
もちろん技術も並行して高度化していくので、もしかしたら降雪やゲリラ豪雨でも対応できるセンサーも将来、できあがっていくかもしれませんが、それはそれで推移を見ていきつつ、運用の部分でも並行して進めていくというのが現実的ではないかと思っています。
坊:「運用でカバーする」という考え方には、大変納得しました。飛行機も、雪で視界が悪い時は運行を取りやめるし、鉄道でも、私は昔、香川県の高松市に住んでいたのですが、瀬戸大橋を走っているJR四国の快速マリンライナーも、強風になると運休していました。旅客輸送は乗客の人命に関わるので、その日の条件によって、事業者が走れるかどうかを判断するというのは当然のことで、自動運転になってもそこは同じだと思います。