札幌オリンピックを契機に建てられ、更新時期を迎えているオフィスビルの建て替え等を補助する施策整備に加えて、2030年に北海道新幹線の全線開通(札幌駅までの延伸)も予定されていることが後押しし、札幌駅周辺では大規模な再開発が複数計画されている。
JR札幌駅南口の「北4西3街区」では、地権者であるヨドバシホールディングスを中心に、大型複合ビル(延床面積約23万m
2)を建設する計画が進んでいる。再開発事業案によれば、「低層部が高さ約50m、高層部が約240mのビルを建設するA案」と、「高さ約50mの低層部と低層部上部南側に約190mの業務棟、東側に約160mの宿泊棟を建設するB案」の2案が検討されている
9。また、「北3西3街区」では、ヒューリック札幌ビル(延床面積約1.4万m
2)と「ヒューリック札幌NORTH33ビル」(延床面積約1.1万m
2)を一体開発する計画が進んでおり、2020年中に着工予定である
10。
JR札幌駅の東側に隣接する「北5西1・西2地区」では、時間貸し駐車場に利用されている札幌市所有の「西1地区」とJR北海道グループが所有する商業施設「エスタ」の「西2地区」を一体的に再開発する計画が進んでいる。JR北海道は、「渋谷スクランブルスクエア」と同規模(高さ230m)の高層ビル建設を目指すとしており、2029年竣工予定である
11。
札幌駅周辺以外の地区でも再開発が進んでいる。札幌市が再開発を推進する「創世1・1・1区(そうせい・さんく)
12」の一つである「大通東1地区」では高層ビル建設が計画されている。同地区には、「北海道電力本店」や北海道中央バスの「中央バスターミナル」、「北海道四季劇場」が立地しているが、建て替えによる一体整備を行い、高さ123mの高層ビル(延床面積9.7万m
2・2029年竣工予定)の建設が計画されている
13。
6 石川勝利「札幌都心における開発誘導とオフィス需給の展望」vol.19 July,2020、RE-SEED、環境不動産普及促進機構
7 一定の要件を満たす賃貸事務所を整備する事業者に、賃貸事務所部分に対応する家屋・償却資産の固定資産税課税標準額の20%相当(上限10億円)を補助。
8 以下の条件を備えたオフィス
・1フロアのオフィス占有床面積が概ね1,000m2以上。・天井高さ2.7m以上、OAフロア100㎜以上
・各階のオフィス用に非常用電源設備の設置スペースを整備。・オフィスを小分けにできる構造の採用
9 建設通信新聞 「延べ23万平米想定/A案高層部は高さ240m/札幌駅南口北4西3地区再開発計画案」(2020年5月1日)
10 北海道建設新聞 「ヒューリックの札幌駅前通開発 20年度以降に新ビル着工」(2019年9月10日)
11 日刊建設新聞 「札幌市、JR北海道ら5者/北5西1・西2地区再開発/準備組合を設立」(2019年11月13日)
12 札幌市中央区の大通西1丁目、大通東1丁目、北1西1丁目の3街区を合わせた総称。
13 北海道建設新聞 「大通東1に再開発ビル 約10万m2、総事業費500億円超」(2018年8月10日)
5. 札幌オフィス市場の見通し