保険研究部 主席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査部長 兼任
中嶋 邦夫(なかしま くにお)
研究領域:年金
研究・専門分野
公的年金財政、年金制度全般、家計貯蓄行動
2 ―― 注目点1=今後の給付水準:いつまで、どこまで下がるか。特に基礎年金に要注目
3 ―― 注目点2=厚生年金の適用拡大:年金財政の観点からは、未適用業種に要注目
前回(2014年)の財政検証からは、現行制度に基づいた将来見通しに加えて、制度改正案の影響を見るための試算(オプション試算)も行われており、今回も行われる予定である。今回試算される改正案は明確でないが、想定される改革案のうち改正の実施が確実なのが、厚生年金の適用拡大である6。ここ数年の「経済財政運営と改革の基本方針」(いわゆる骨太方針)に盛り込まれてきたため、拡大を前提として、どの基準がどう拡大されるのかが注目点となる。
厚生年金の適用拡大といえば短時間労働者(パート労働者)への拡大が注目されがちだが、年金財政の観点からは、現在は厚生年金の強制適用の対象となっていない事業所への拡大が注目される。厚生年金の加入は、労働時間などの働き方だけでなく、職場(事業所)が厚生年金の対象か否かにも影響される。現在の制度では、法人の事業所は業種や規模に関係なく厚生年金の強制適用の対象である一方で、個人事業所は法律で決められた16業種(法定16業種)かつ従業員が5人以上の場合にのみ、強制適用の対象となる。それ以外の個人事業所は適用拡大の対象となり得るが、従業員が5人未満の事業所は、既に強制適用の対象となっている法人において実際の適用が不十分という問題がある。そのため着実な実施を重視する観点からは、従業員が5人以上の法定16業種以外の個人事業所への適用拡大が優先される可能性がある。
仮に法定16業種以外への適用拡大が実施された場合、対象となる労働者(約300万人)は、国民年金の第1号被保険者(自営業と同じ扱い)から第2号被保険者(他業種の会社員と同じ扱い)へと移る(図表3)。
3 ―― 注目点2=厚生年金の適用拡大:年金財政の観点からは、未適用業種に要注目
保険研究部 主席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査部長 兼任
研究領域:年金
研究・専門分野
公的年金財政、年金制度全般、家計貯蓄行動
【職歴】
1995年 日本生命保険相互会社入社
2001年 日本経済研究センター(委託研究生)
2002年 ニッセイ基礎研究所(現在に至る)
(2007年 東洋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了)
【社外委員等】
・厚生労働省 年金局 年金調査員 (2010~2011年度)
・参議院 厚生労働委員会調査室 客員調査員 (2011~2012年度)
・厚生労働省 ねんきん定期便・ねんきんネット・年金通帳等に関する検討会 委員 (2011年度)
・生命保険経営学会 編集委員 (2014年~)
・国家公務員共済組合連合会 資産運用委員会 委員 (2023年度~)
【加入団体等】
・生活経済学会、日本財政学会、ほか
・博士(経済学)