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コラム

数字の「27」に関わる各種の話題-27は3の3乗だが-

2025年11月13日

(中村 亮一) 保険計理

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■要旨

数字の「27」と聞くと、多くの方が3の3乗(33)だと思いつくのではないかと思われるが、それ以外にはと聞かれると、なかなか次が思い浮かばないという人が殆どではないかと思われる。実は、数字の「27」は、思わぬところに現われてくるし、数字として結構興味深い性質も有しているので、これらを紹介したい。

■目次

はじめに
「27」は3の3乗(1辺が3の立方体の体積)
月の軌道周期は約27日
人間の手の骨の数は片手で27個
新約聖書は27巻
バッハのミサ曲 ロ短調は27曲
数字の「27」が有する興味深い性質
その他の数字の「27」が現れてくる例
最後に
 

はじめに

はじめに

数字の「27」と聞くと、多くの方が3の3乗(33)だと思いつくのではないだろうか。でもそれ以外にはと聞かれると、なかなか次が思い浮かばないという人が殆どなのではないかと思われる。

今回は、この数字の「27」について、それが現れてくる例やその理由等について調べてみた。

「27」は3の3乗(1辺が3の立方体の体積)

「27」は3の3乗(1辺が3の立方体の体積)

3の3乗ということは、1辺が3の立方体の体積ということになる。このことから、ルービックキューブを思い浮かべる人も多いのではないかと思われる。

ルービックキューブ(Rubik's Cube)は、ハンガリーの発明家、建築家であるルビク・エルネー(Rubik Ernő)が1974年に考案した立体パズルで、立方体の各面は異なる6色で構成され、各面が3×3の9マスに分割されている。各列を回転させてキューブを動かすことで、任意の配色状態にあるキューブを(できるだけ効率的に)各面が同一色になるように揃えることを目指すパズルとなっている。

このルービックキューブに関係する数字として、以前の研究員の眼「数字の「20」に関わる各種の話題-20進法は古くから使用されており、その名残が現在でも随所で見受けられる-」(2023.5.19)において、「どんな状態からでも、最大20手で全面揃った状態に戻せる、ことが証明されている。」と紹介した。常に最短の手数で済むアルゴリズムは「ゴッドアルゴリズム(神のアルゴリズム、God's Algorithm)」、このアルゴリズムで解くために最大で必要な手数は「ゴッドナンバー(神の数、God's Number」と呼ばれているが、まさにルービックキューブの「ゴッドナンバーは20である」ということになる。なお、ルービックキューブの組み合わせ数は、約4,325京通り(=4.325×1019通り)あり、「巨大数」の一例ともなっている。

その意味では、3の3乗という数字をベースに、別の数字への拡がりを見せる形になっている。

月の軌道周期は約27日

月の軌道周期は約27日

月は地球の自転と同じ方向(北極の方向から見た場合に反時計回り)に地球の周りを公転しているが、その公転周期(月が地球の周りを1回転するのにかかる時間)は約27.3日となっている。即ち、地球は月の公転よりも27.3倍速い速度で自転している。なお、正確に言うと「月は地球の中心そのものの周りを回っている」のではなく、地球と月の共通の重心(質量中心)の周りを回っており、この重心は地球の内部、地球の中心から約4,600km(地球半径の約4分の3)の位置にある。

一方で、月の自転周期(月自体が1回転するのにかかる時間)も約27.3日となっている。このため、月は常に同じ面を地球に向けている。これは「潮汐ロック」又は「同期自転」と呼ばれて、地球の強い引力(潮汐力)が月にかかることで発生している。月を見ていると、いつもウサギのような模様が見え、月の裏側が見えないと言われるのはこの理由による。なお、これについても正確には、月の軌道が楕円形であることから、公転速度が一定ではなく、月の見える面はわずかに揺れるように変化する。これは「秤動(ひょうどう)」と呼ばれている。これにより地球からは月の表面の約6割を見ることができるようだ。

と、ここまでの話を聞いて、「あれ、月の満ち欠けの周期は29日程度ではなかったのか」、「27日というのは何だろう」と疑問に思われる方も多いものと思われる。

実は、27.3日というのは、「恒星月(こうせいげつ)」と呼ばれるもので、月が恒星を基準にして地球の周りを一周するのにかかる時間、つまり、月が天球上で同じ恒星の位置に戻ってくるまでの周期を指している1。これに対して「朔望月(さくぼうげつ)2と呼ばれるものが、新月から次の新月(又は、満月から次の満月)までの時間、つまり、月の満ち欠けの周期となっており、これが約29.5日となっている。

朔望月の方が長いのは、地球も太陽の周りを(月と同じ反時計回りに)公転しているため、月が新月(又は満月)となる位置に戻るには、恒星月よりも余分に動く必要があることによる。これは恒星が太陽よりも遥かに遠い位置にあるため、その位置が天空上は固定されているのに対して、地球の公転により、太陽との位置関係で定まる新月(又は満月)となる位置が地球の公転がより進んだ位置(よって、月の公転もより進んだ位置)とならざるをえないことによる。

太陰暦等の暦には朔望月が採用されているが、これは暦が人々の生活に密接に関係しているもので、月の満ち欠けが、古代から人間の眼で観測でき、夜の明るさにも影響していることによる。そもそも「月(つき)」という言葉自体が月の満ち欠けの周期を意味している。

恒星月は、天文学で重要な「純粋な公転周期」を示している。
 
1 天球は、星空を球状のスクリーンのように見立てたもの。恒星は、この天球上に固定されているように見える遠くの星々(実際には動いているが、非常にゆっくりであるため、無視できる)。月は地球の周りを回っていて、夜空の中を少しずつ移動していくが、例えば、ある夜に月が「おうし座のアルデバラン(おうし座で最も明るい橙色巨星)」の近くに見えたとして、その月が再びアルデバランの近くに戻ってくるまでの時間が「恒星月」となる。
2 「朔」は新月、「望」は満月のことを指している。

人間の手の骨の数は片手で27個

人間の手の骨の数は片手で27個

人間の手には 片手で27個、両手で54個の骨がある。

その内訳は、以下の通りとなっている。

手根骨(しゅこんこつ):8個
手首を構成する小さな骨。舟状骨・月状骨・三角骨・豆状骨・大菱形骨・小菱形骨・有頭骨・有鈎骨。

中手骨(ちゅうしゅこつ):5個
手のひら部分を形作る骨。親指から小指まで1個ずつ。

指骨(しこつ):14個
各指を構成する骨。
・親指:基節骨・末節骨の2個
・他の4指:基節骨・中節骨・末節骨の3個ずつ

新約聖書は27巻

新約聖書は27巻

新約聖書は27巻となっているが、これは最初から27巻と決まっていたわけではなく、正典化のプロセスの中で、最終的には、紀元397年のカルタゴ会議で、現在の27巻が「正典」として認められたことによる。イエスの弟子等が書いた福音書や黙示録等の中から、使徒やその直弟子による著作であり、教会全体で広く用いられていたことや教えが正統信仰と一致していること等の基準に基づいて選定されている。

従って、「27」という数字自体に象徴的な意味はなく、あくまでも歴史的な正典化の過程で27巻となったようだ。「3(神学的な意味での完全数)× 3 × 3 = 27」として、三位一体の完成を象徴する、といった読み方をすることもあるようだが、これは後世の神学的解釈であり、初めから意図されたものではないようだ。

バッハのミサ曲 ロ短調は27曲

バッハのミサ曲 ロ短調は27曲

ミサ曲 ロ短調は、ヨハン・ゼバスティアン・バッハが作曲したミサ曲である。マタイ受難曲、ヨハネ受難曲と並び、バッハの作品の中でも最高峰に位置するとされており、ベートーヴェンの「ミサ・ソレムニス ニ長調」とともに、演奏会用ミサ曲の最高傑作と呼ばれている。これは27曲から構成されている。

バッハはしばしば数秘的な象徴を音楽に込めており、特に「14」という数字が自分の名前を数字に置き換えた場合に相当している(ドイツ語のアルファベットの数値化(ゲマトリア)により、「BACH」という名前が、B=2,A=1,C=3,H=8で合計14になることに由来している)ことから好んでいたようだが、「27」という数字はバッハ自身が特別な意味を込めていたわけではない。実際に27曲となったのは後世の校訂者によるものである。

数字の「27」が有する興味深い性質

数字の「27」が有する興味深い性質

実は、数字の「27」に関しては、以下のような興味深い性質(?)がある。

27の倍数である三桁の数字を周期的に回転させると、その数字も27の倍数となる。

具体的には

297(=27×11)、972(=27×36)、729(=27×27) というような具合である。

これは、以下の算式から確認できる。a×100+b×10+c が27の倍数として、

(a×100+b×10+c)-(a+b×100+c×10)=a×(108-9)―b×(81+9)-c×9
 =27×4×a-27×3×b-9×(a+b+c) ((a+b+c)は3の倍数)

(a×100+b×10+c)-(a×10+b+c×100)=a×(81+9)+b×9-c×(108-9)
 =27×3×a-27×4×c+9×(a+b+c) ((a+b+c)は3の倍数)

27の任意の倍数を左右逆にして、それぞれの数字の間に0を加えた数字もまた27の倍数となる。 

具体的には、上記の297を例にとると、70902は27の倍数となる。

例えば、三桁の27の倍数 a×100+b×10+c の場合を考えると、

(c×104+b×100+a)-(a×100+b×10+c)
 =a×(9-108)+b×(81+9)+c×(999×10+9)
 =-27×4×a+27×3×b+27×37×c+9×(a+b+c) ((a+b+c)は3の倍数)

27の倍数に「000」又は「999」を挿入(挿入は、(冒頭や末尾を含む)どこでもよく、また複数回挿入してもよい)した数字もまた27の倍数になる。

具体的には例えば、27の倍数が二桁の場合で、以下の数字はいずれも27の倍数となっている。

20007、29997、50004、59994、80001、89991

これは、999=27×37 であることが関係しており、以下の算式から確認できる。

10a+b が27の倍数として、

a×104+b=a(10+9990)+b=10a+b+27×37×10×a
a×104+999×10+b=a(10+9990)+b=10a+b+27×37×10×(a+1)

より一般的には、mod関数(割り算を行った際の余りを求めるための関数)を利用して、まさに 

999≡0(mod 27)、103≡1(mod 27)であることから、以下のように証明される。

ある27の倍数Nを、上位桁部分Aと下位のk桁部分Bに分けて、以下の通りとする。

N=A・10k+B  (挿入位置の右側にある桁数がk

「000」を挿入する場合: 新しい数は  N1=A・10k+3+B  となるが、103≡1(mod 27)より

N1≡A・10k+B=N(mod 27)

「999」を挿入する場合: 新しい数は N2=A・10k+3+999・10k+B  となるが、

999≡0(mod 27)、103≡1(mod 27)より

N2=A・10k+0+B=N(mod 27)

挿入位置でkは変わるが、上の合同計算は任意の kに対して成立するので、どこに挿入してもよく、また27の倍数性は各挿入で保持されるので、複数回繰り返しても保持されることになる。

27はその各桁の数の合計の3倍となる唯一の正の整数となっている。

これは、k桁の自然数nの各桁の和をs(n)とすると、求める条件は n=3s(n)

nがk桁なので s(n)≦9k よって、n=3s(n) ≦27k 

一方で、n≧10k-1 であることから、10k-1 ≦27k 

これを満たすのは、k=1、2のみ

k=1は明らかに適当でないので、k=2となる。

n=10a+b とするとs(n)=a+b となることから 
  10a+b =3(a+b)→ 7a=2b

これを満たすaとbの組み合わせで条件を満たすのは、a=2、b=7 のみとなる。

27はその数字の間の数字の合計に等しい。

2+3+4+5+6+7=27

このような数字は、他には15(=1+2+3+4+5)だけである。これも定義に従って算式を解けば、そんなに難しくない形で証明できるが、若干長くなるのでここでは省略する。

その他の数字の「27」が現れてくる例

その他の数字の「27」が現れてくる例

・野球で9回のアウトの数は27個。

・スペイン語のアルファベットは、通常のラテンアルファベットの26文字に、スペイン語に固有の文字ñ(エニェ)を加えて、合計で27文字となっている。

最後に

最後に

今回は数字の「27」について、それが現れてくる例やその理由等について、報告してきた。

「27」という数字は、「3の3乗」となる立方数で、個人的には立方体のイメージと結びついて、何となくバランス感のある数字との印象を有していた。ただし、数字自体が一定程度大きいことから、日常生活等で「27」という数字に出会うケースは多くないものと思われる。それでも、思わぬところに数字の「27」が現れてくることが確認され、また、数字の世界で興味深い性質を有していることも新たに認識できたのではないかと思っているが、いかがだろうか。
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