マスク着用の健康への影響-コロナ禍の研究を経て分かっていること/いないこと

2025年06月12日

(岩﨑 敬子) 保険会社経営

■要旨

マスク着用が人々に与える影響に関する研究分野は、コロナ禍でのその研究の需要の高まりを受けて、近年急速に進展した。マスク着用の影響は、感染拡大予防効果のような医学的側面から、コミュニケーションの質など社会心理的側面まで多岐にわたる。コロナ禍を経た研究蓄積をもとに、そのメリットやデメリットを多面的に捉えることは、マスクとのより良い付き合い方を考える機会となるかもしれない。そこで本稿を含めて、全5回の基礎研レポート/基礎研レターでは、マスク着用の人々への影響について、「健康」「メンタルヘルス1・2」「コミュニケーション1・2」に分けて、コロナ禍を経た研究蓄積からわかっていること/いないことを紹介していく。本稿では、その第一弾として、マスク着用の健康への影響を取り上げる。要約を先取りしてお伝えすると、マスク着用の感染拡大予防効果は確認されており、特に感染源対策としてより強い根拠があることが分かっている。一方で、マスク着用の身体的健康へのデメリットについては、不快感や頭痛といった報告があるものの、一般の健康な人々の間において、深刻な悪影響は確認されていない。

■目次

1――マスク着用の感染拡大予防効果はあり、特に感染源対策としてより強い根拠がある
  1|感染拡大予防効果があることは概ね確立している
  2|感染拡大予防効果の程度は感染源対策の効果の方が大きいかもしれない
2――マスク着用の健康への深刻な悪影響は報告されていない

保険研究部   准主任研究員

岩﨑 敬子(いわさき けいこ)

研究領域:保険

研究・専門分野
応用ミクロ計量経済学・行動経済学 

経歴

【職歴】
 2010年 株式会社 三井住友銀行
 2015年 独立行政法人日本学術振興会 特別研究員
 2018年 ニッセイ基礎研究所 研究員
 2021年7月より現職

【加入団体等】
 日本経済学会、行動経済学会、人間の安全保障学会
 博士(国際貢献、東京大学)
 2022年 東北学院大学非常勤講師
 2020年 茨城大学非常勤講師

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