本稿では、東京23区の新築マンション市場を概観した。東京23区の新築マンション価格は前年比+13%上昇した。エリア別では、資産性を重視する傾向が強まり「都心」は前年比+29%、「タワーマンション」は前年比+25%上昇した。
また、上昇率を上期と下期に分けて確認すると、都心(上期13%/下期16%)は下期にかけて上昇率が拡大した一方、南西部(上期8%/下期3%)は下期に上昇率が縮小し、北部(上期5%/下期▲1%)と東部(上期11%/下期▲1%」は下期に下落に転じる結果となった。
東京23区では、ローン借入
23を前提にマンション購入を検討する消費者が多いなか、住宅ローン金利の水準は、住宅購入判断に影響を及ぼしている
24。長期固定金利住宅ローンである「フラット35」の金利
25は、2022年以降上昇傾向で推移し2%の水準に迫っている。
首都圏の新築マンション需要は、30代および40代の「夫婦と子からなる世帯」と「夫婦のみの世帯」
26が支えている部分が大きい。しかし、国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)令和6(2024)年推計」によれば、東京都の世帯主が30代および40代である「夫婦と子からなる世帯」は、約78.9万世帯(2020年)から約73.5万世帯(2030年・対2020年比▲7%)に、「夫婦のみの世帯」は、約27.8万世帯(2020年)から約26.3万世帯(2030年・対2020年比▲5%)に減少する見通しである。
また、トランプ政権による相互関税の発表を受けて、株価の下落や円高が進行しており、資産効果の剥落や海外富裕層のマンション購入意欲に影響を与える可能性がある。
2025年は、大規模タワーマンションの販売が複数計画されており、新規供給戸数は前年から増加する見通し
27である。経済および金融市場、世帯数の動向次第では、需給環境が悪化する可能性もあり、引き続き注視が必要であろう。
23 リクルート住まいカンパニー「首都圏新築マンション契約者動向調査」によれば、2024年の住宅ローン借入総額は、平均5,671万円となり、2005年以降で最も高かった。
24 野村不動産ソリューションズ「第28回住宅購入に関する意識調査アンケート」によれば、「買い時だと思う理由」を質問したところ、「今後、住宅ローンの金利が上がると思われる」(59.9%)との回答が最も多かった。
25 返済期間が21年以上35年以下の下限金利。
26 リクルート住まいカンパニー「首都圏新築マンション契約者動向調査」によれば、首都圏における新築マンション購入者の世帯主年齢は30代前半(30%)が最も多く、次いで30代後半(19%)、40代(18%)が多い。また、世帯構成は、「子供あり世帯」(35%)が最も多く、次いで「夫婦のみの世帯」(33%)となっている。
27 不動産経済研究所「首都圏・近畿圏マンション市場予測」によれば、東京23区の新築マンション新規供給戸数は約1.2万戸と予測されている。