米国経済の見通し-25年初から関税政策をはじめ、経済政策は混沌の極み。景気後退回避を予想もリスクは上昇

2025年03月10日

(窪谷 浩) 米国経済

■要旨
 
  1. 米国の24年10-12月期の実質GDP成長率(前期比年率)は+2.3%(前期:+3.1%)と前期から低下。在庫投資の成長押し下げ(▲0.8%ポイント)の影響が大きく、個人消費は前期比年率+4.2%(前期:+3.7%)と高成長となった前期から伸びが更に加速。
     
  2. 25年1月のトランプ政権発足以降、カナダ、メキシコに対する25%(その後延期)、中国に対する20%関税を発動するなど、通商政策をはじめ政策の予見可能性が大幅に低下。この結果、株式市場が下落したほか、消費者センチメントが大幅悪化、短期のインフレ予想が大幅上昇。個人消費は1月の減少と併せ、足元で大幅減速の可能性。
     
  3. トランプ大統領が連日、矢継早に政策を打ち出す中で、25年以降の米国経済は同氏の経済政策運営に左右されるため、米国経済見通しに対する不透明感は大幅に上昇。
     
  4. 当研究所は税制改革が成長押し上げ要因となる一方、関税の引上げや移民の強制送還が成長押し下げ要因とみられ、政策全体では25年と26年ともに成長押し下げが優勢になると評価。実質GDP成長率(前年比)は25年が+2.0%、26年が+1.7%と24年の+2.8%から大幅な低下を予想。現時点で景気後退回避を予想しているが、関税政策などによりリスクは上昇。
     
  5. 金融政策は、25年6月に利下げを実施した後、インフレ高進に伴い26年後半にかけて政策金利を据え置き。インフレ低下に伴い26年は年後半に1回の利下げを予想。
     
  6. 上記見通しのリスクはインフレ高進とトランプ氏の政策予見可能性低下も含めた国内政治の混乱。

 
■目次

1.経済概況・見通し
  (経済概況)10-12月期の成長率は前期から低下も個人消費は堅調維持
  (経済見通し)成長率(前年比)は25年が+2.0%、26年が+1.7%を予想
2.実体経済の動向
  (労働市場、個人消費)労働市場の減速は継続、個人消費は減速へ
  (設備投資)規制緩和などは追い風も関税政策の不透明感もあって大幅な減速を予想
  (住宅投資)当面は住宅ローン金利の高止まりから住宅需要の回復は限定的
  (政府支出)25年度予算は予算決議の一本化、暫定予算への対応など非常に不透明
  (貿易)流動的な関税政策に伴い予測が困難
3.物価・金融政策・長期金利の動向
  (物価)関税、不法移民の強制送還がインフレ押上げ
  (金融政策)25年、26年ともに年1回の利下げを予想
  (長期金利)25年10-12月期平均が4.4%、26年10-12月期平均が同4.2%と予想

経済研究部   主任研究員

窪谷 浩(くぼたに ひろし)

研究領域:経済

研究・専門分野
米国経済

経歴

【職歴】
 1991年 日本生命保険相互会社入社
 1999年 NLI International Inc.(米国)
 2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
 2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
 2014年10月より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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