少子化とランドセル市場-2024年はやや縮小するも、10年前と比べて2割増

2025年02月12日

(久我 尚子) ライフデザイン

■要旨
 
  • 少子化にも関わらず、これまでランドセル市場は拡大してきたが、2022・2023年(563億円)をピークに2024年はやや縮小(552億円)へと転じた。これまでは少子化による人口減少の影響に対して、ランドセルの平均価格の上昇効果が上回ってきたが、今後とも人口減少効果が上回ることで市場は緩やかに縮小していくだろう。
     
  • ランドセル平均価格上昇の背景には「6ポケット」(両親と両祖父母の経済ポケット)と言われるような1人の子どもに充てられる予算が増えていることがある。祖父母による購入が過半数を占め、帰省時に選ぶ家庭が増えたことや近年の「ラン活」によって、購入時期のピークは入学直前の冬から前年度の5月へと前倒しされている。
     
  • ランドセルの色は多様化しており、かつては男児は黒、女児は赤一辺倒だったが、現在は男児では黒が過半数で、4割は紺や青、緑などが占めるようになり、女児では最多は紫/薄紫が約3割で、桃や水色、赤、薄茶など多様化している。また、6年間での需要変動に対応したランドセルのサブスクリプションサービスも登場している。
     
  • 今後ともランドセルのような人生の記念となる消費については6ポケットによって予算に余裕のある傾向は続くものの、物価高が継続する中では消費対象を選び抜くメリハリ志向は一層高まっていると見られる。消費財などは可能な限り支出を抑える一方、娯楽や娯楽といった非日常的な消費は費用対効果や付加価値の高さが重視される傾向が続くだろう。


■目次

1――ランドセルの市場規模~2024年はやや縮小するも、10年前と比べて2割増
2――ランドセル平均価格上昇の背景~6ポケットによる予算拡大効果に「ラン活」が拍車
3――ランドセル色の多様化~男児は黒が過半数、女児は薄紫など多様化、サブスクサービスも
4――おわりに~物価高でメリハリ志向が高く、非日常消費は費用対効果や付加価値の高さが重視

生活研究部   上席研究員

久我 尚子(くが なおこ)

研究領域:暮らし

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴

プロフィール
【職歴】
 2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
 2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
 2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
 2021年7月より現職

・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

【加入団体等】
 日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
 生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

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