経済研究部 主任研究員
高山 武士(たかやま たけし)
研究領域:経済
研究・専門分野
欧州経済、世界経済
・世界成長率はコロナ禍前も足もとでも3%前後で変わりがないが、地域別には「インドは台頭」「中国は減速」「EUも減速」「米国は底堅い」状況にある。
・インドは投資を中心とした堅調な内需に支えられ高成長を遂げている。ただし、「西側諸国」にとってはインドの高成長の直接的な恩恵は感じられにくいだろう。
・中国とEUの減速については、貿易面から整理すると状況を捉えやすい。中国の成長鈍化は内需不振、特に不動産不況の影響が大きく、内需不振のなかで政府主導の政策推進もあり国内生産力に過剰感が生じたことが輸出の価格競争力となっている。EUは価格競争力の増す中国にシェアを奪われており、戦争勃発後の資源価格の高騰や、資材価格の上昇、人手不足、過剰規制、煩雑な行政手続きなどもEUの輸出競争力を低下させている
・米国経済は、積極的な金融引き締めにもかかわらず成長がむしろ堅調だった。その理由として、「交易条件改善」「高金利耐性」「財政緩和」「新陳代謝」の要因が指摘できる。
・コロナ禍以降の日本経済は、堅調な米国だけでなく、景気減速感が目立つ欧州と比較しても出遅れている。賃上げペースが緩慢で実質所得の回復が遅れていることが内需の弱さにつながっている。
・上記を踏まえた今後の注目点のひとつは、今年も米国経済の強さが維持されるのか、だろう。米国の貯蓄率がコロナ禍前を下回っている状態、つまり消費が活性化している状況が持続されている点は依然として「謎」であり、現在の消費水準が維持可能なのかという疑問が残る。良好な雇用環境、株価上昇といった要因が所得・消費を支える要因となっていると見られるが、金利の高止まりが懸念されるなかで調整が起きるリスクも意識される。また、米国の成長減速は、世界にも波及しやすいと見られ、仮に米国経済が腰折れすれば、世界経済全体が下振れするリスクとなるだろう。
・今後の経済状況を予想する上では、今年大統領に返り咲いたトランプ氏の影響は欠かすことができない。しかし、実際にどのような政策が具体的に実行されるのかについては、不透明な部分も大きい。重要な点は、トランプ大統領の政策によって、米国の成長が維持されるとする「ベースラインシナリオ」から外れる可能性が高まること、場合によっては米国の腰折れリスクシナリオを高めてしまうことだろう。
経済研究部 主任研究員
研究領域:経済
研究・専門分野
欧州経済、世界経済
【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員