東南アジア経済の見通し~米トランプ政権発足で景気下振れリスク高まる

2024年12月24日

(斉藤 誠) アジア経済

■要旨
 
  1. 東南アジア5カ国は今年景気の上向き傾向がみられる。2024年7-9月期の成長率をみると、ベトナム(前年同期比+7.4%)とマレーシア(同+5.3%)、タイ(同+3.0%)は輸出の回復により景気に明るさがみられる。フィリピン(同+5.2%)は悪天候の影響で景気の減速が目立ったが、インドネシア(同+4.9%)は底堅い成長を維持している。
     
  2. 消費者物価上昇率は足元で落ち着いた動きが続いているが、今後は雇用所得環境の改善や通貨安に伴う輸入インフレにより徐々にインフレ率が上向くものとみられる。もっともこれまでの利上げの累積効果が続くほか、来年は外需の下押しにより成長ペースが抑制されるなかで物価上昇は緩やかな伸びにとどまるだろう。
     
  3. 金融政策はインフレの鈍化を受けて、幾つかの国では金融緩和が始まっている。フィリピンは米国の利下げに先行する形で8月から3会合連続の利下げ、またインドネシアは9月に、タイは景気低迷により10月に利下げを実施した。今後はフィリピンとインドネシアがインフレや為替の動向を見極めながら段階的な金融緩和を実施すると予想する。
     
  4. 先行きの東南アジア経済は輸出の増勢が弱まるだろうが、内需が堅調に推移するなかで底堅い成長が続くだろう。国別にみると、2024年の景気動向が緩慢だったフィリピンとインドネシア、タイは堅調な成長軌道が続くだろう。一方、経済の輸出依存度が高いベトナム、マレーシアは2024年が輸出と製造業の回復により高成長だっただけに2025年は増勢が鈍化するだろう。
■目次

1.東南アジア経済の概況と見通し
  経済概況:財輸出と製造業の回復により景気上向き
  物価:インフレ率は緩やかな上昇へ
  金融政策:インドネシアとフィリピンが追加利下げ実施へ
  経済見通し:米トランプ政権の通商政策の影響次第では成長下振れの可能性も
2.各国経済の見通し
  2-1.マレーシア
  2-2.タイ
  2-3.インドネシア
  2-4.フィリピン
  2-5.ベトナム

経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠(さいとう まこと)

研究領域:経済

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴

【職歴】
 2008年 日本生命保険相互会社入社
 2012年 ニッセイ基礎研究所へ
 2014年 アジア新興国の経済調査を担当
 2018年8月より現職

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