ティッピングポイントのモデル化-気候変動のレジームシフトをどのようにモデル化するか?

2024年11月12日

(篠原 拓也) 保険計理

■要旨

気候変動問題への注目度が高まっている。台風、豪雨などの極端な気象現象による災害の激甚化・頻発化、大規模な干ばつや山林火災の発生など、世界各地でさまざまな影響があらわれている。気候変動問題の中心には、人為的な温室効果ガスの排出に伴う地球温暖化がある。世界全体の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求するといった上昇幅の背景には、ティッピングポイント(転換点)という考え方がある。本稿では、こうしたティッピングポイントや、そのモデル化の取り組みについて、見ていくこととしたい。

■目次

1――はじめに
2――ティッピングポイントとは
  1|気候変動問題の波及経路は複雑
  2|ティッピングポイントに達すると不可逆的な変化が起こることも
  3|社会経済的ティッピングポイント (SETP) は社会経済システムが急激かつ
   根本的な変化を指す
  4|保険に関するSETPもある
3――ティッピングポイントの数理モデル化
  1|数理モデル化は特定の気候関連事象に限定したうえで地域を絞って行われる
  2|SETPの数理モデル化は7段階のフレームワークを通じて行われる
  3|レジームシフトの特定には、統計的な手法が用いられる
  4|「料率誘導型ティッピングポイント」には、段階的な適応努力では不十分
  5|暑熱による健康保険・死亡保険として、パラメトリック保険や企業向け保険の
   創設が例示されている
4――おわりに (私見)
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