もっと複雑な変形版の問題を考えてみよう。
ドアの数を3つではなく、5つに増やす。そのうち、アタリのドアは2つ。そして、司会者が開くドアの数をハズレのドア1つではなく、ハズレのドア2つにする。
問題文を書くと、次のような感じだ。
(変形その2(ドアは5つ(うちアタリ2つ)で、司会者はハズレを2つ開く場合))
解答者の目の前には(1)、(2)、(3)、(4)、(5)の5つのドアがある。このドアの部屋のうち2つに宝物が入っていてそのドアはアタリ、残り3つはハズレとなる。解答者はアタリのドアを当てたら宝物をもらえる。解答者は、どれか1つの部屋を選ぶように言われる。選んだ後、答えを知っている司会者は、解答者が選んでいない4つの部屋のうちハズレの部屋のドアを2つ開ける。そして、「もう一度よく考えてみてください。最初に選んだ(1)のままにしますか? それとも選択を変えますか?」と問う。
このとき、解答者は最初に選んだ(1)のままにすべきか、それとも選択を変えるべきか?
ベイズの定理を使って、問題を解いてみよう。
まず、事象を表す記号については、先ほどまでと同様とする。ただし、今回の変形版では、司会者が開くドアが2つなので、B2∩B3を司会者がドア(2)とドア(3)を開く事象、などと表す。
各事象の確率を考えてみよう。まず、A1、A2、A3、A4、A5は同じ確率で起こると見てよいだろう。したがって、P(A1)=P(A2)=P(A3)=P(A4)=P(A5)=2/5。
また、「かつ」事象の確率について、A1∩A2、A1∩A3、A1∩A4、A1∩A5、A2∩A3、A2∩A4、A2∩A5 、A3∩A4、A3∩A5、A4∩A5は同じ確率で起こると見てよいだろう。したがって、P(A1∩A2)=P(A1∩A3)=P(A1∩A4)=P(A1∩A5)=P(A2∩A3)=P(A2∩A4)=P(A2∩A5)=P(A3∩A4)=P(A3∩A5)=P(A4∩A5)=1/10。
次に、P(B2∩B3|A1∩A2)を考えてみる。ドア(1)と(2)にアタリがある場合に、司会者がドア(2)とドア(3)を開く確率だ。だがこの場合に、司会者がアタリであるドア(2)を開くことはありえない。したがって、P(B2∩B3|A1∩A2)=0。
一方、P(B3∩B4|A1∩A2)は、ドア(1)と(2)にアタリがある場合に、司会者がドア(3)とドア(4)を開く確率だ。この場合、司会者が開く2つのドアとして、(3)と(4)、(3)と(5)、(4)と(5)の3通りが考えられ、それらの確率は等しいと見られる。つまり、P(B3∩B4|A1∩A2)=1/3。
つづいて、P(B2∩B3|A2∩A3)を考えてみる。ドア(2)と(3)にアタリがある場合に、司会者がそれらのドアを開く確率だが、そんなことはありえない。したがって、P(B2∩B3|A2∩A3)=0。これと同様に考えて、P(B2∩B4|A2∩A3)=0。この場合、司会者はドア(4)と(5)を開くしかないため、P(B4∩B5|A2∩A3)=1。
これらをまとめると、次のようになる。
P(Bi∩Bj|A1∩Ak) = 0 (k=iまたはk=jのとき)、1/3 (k≠iかつk≠jのとき) (ただし、i, j, kは1以外とする。)
P(Bi∩Bj|As∩At) = 0 (i, jの少なくとも一方がs, tと一致するとき)、1 (i, j, s, tが異なるとき) (ただし、i, j, s, tは1以外とする。)
ここで、ベイズの定理を用いて確率の計算を行う。まず、解答者が最初に選んだドアを変えなかった場合のアタリの確率を計算してみる。司会者がドア(2)とドア(3)を開けた場合にドア(1)がアタリの確率は、次のようになる。(計算途中、…で省略している部分は、A1∩A2からA4∩A5までの10個の項の和。また、分子と分母に出てくるP(Ai∩Aj)はどれも1/10なので約分し、数字としては表示しない。)
P(A1|B2∩B3)
=P(A1∩A2|B2∩B3)+P(A1∩A3|B2∩B3)+P(A1∩A4|B2∩B3)+P(A1∩A5|B2∩B3)
=P(A1∩A4|B2∩B3)+P(A1∩A5|B2∩B3)
=P(B2∩B3|A1∩A4)/{P(B2∩B3|A1∩A2)×P(A1∩A2)+…+P(B2∩B3|A4∩A5)×P(A4∩A5)}×P(A1∩A4)
+P(B2∩B3|A1∩A5)/{P(B2∩B3|A1∩A2)×P(A1∩A2)+…+P(B2∩B3|A4∩A5)×P(A4∩A5)}×P(A1∩A5)
=1/3 /{0+0+1/3+1/3+0+0+0+0+0+1}+1/3 /{0+0+1/3+1/3+0+0+0+0+0+1}
=2/5
次に、解答者が最初に選んだドアを変えた場合のアタリの確率を計算してみる。司会者がドア(2)とドア(3)を開けた場合にドア(4)がアタリの確率は、
P(A4|B2∩B3)
=P(A1∩A4|B2∩B3)+P(A2∩A4|B2∩B3)+P(A3∩A4|B2∩B3)+P(A4∩A5|B2∩B3)
=P(A1∩A4|B2∩B3)+P(A4∩A5|B2∩B3)
=P(B2∩B3|A1∩A4)/{P(B2∩B3|A1∩A2)×P(A1∩A2)+…+P(B2∩B3|A4∩A5)×P(A4∩A5)}×P(A1∩A4)
+P(B2∩B3|A4∩A5)/{P(B2∩B3|A1∩A2)×P(A1∩A2)+…+P(B2∩B3|A4∩A5)×P(A4∩A5)}×P(A4∩A5)
=1/3 /{0+0+1/3+1/3+0+0+0+0+0+1}+1 /{0+0+1/3+1/3+0+0+0+0+0+1}
=4/5
事象の対称性を用いて、計算結果をまとめると、この変形版の問題では、司会者がハズレのドアを2つ開いた後、解答者が最初に選んだドアを変えない場合、そのドアがアタリの確率は2/5。解答者がドアを変えた場合、変えたドアがアタリの確率は4/5となる。つまり、確率を上げるために、選択を変えるべきということになる。