訪日外国人消費の動向(2024年1-3月期)-円安効果で消費額はコロナ禍前の1.5倍、2倍の国も

2024年07月04日

(久我 尚子) ライフデザイン

■要旨
 
  • 2024年1-3月の訪日外客数(855万8,302人)はコロナ禍前より+6.3%増加。最多は韓国(全体の27.3%)、次いで台湾(同17.3%)、中国(同15.5%)と続く。中国は回復途上だが2023年10-12月期(コロナ禍前同期比▲62.3%)と比べて大きく改善(同▲38.8%)。米国(同+53.2%)や豪州(同+46.3%)をはじめとした他国は円安による割安感などの影響からコロナ禍を大幅に上回る。
     
  • 訪日外国人旅行消費額(2024年1-3月は1兆7,505億円:1次速報値)はコロナ禍の1.5倍に増加。円安による割安感で宿泊料や買い物代などの消費単価が増加していること、日本国内の消費者物価の上昇などの影響で1人当たりの消費額(コロナ禍前同期平均14万7,413円→今期平均20万8,760円)がコロナ禍前より約4割増加。
     
  • 国籍・地域別に見て最多は中国(全体の20.2%)、次いで台湾(同14.4%)、韓国(同13.7%)と続く。中国の外客数は3位だが既に消費額は首位を占めるまでに改善。訪日外客数が多い国ほど消費額は多い傾向はあるが、欧米諸国は観光・レジャー目的による平均泊数の長さ(10日程度)、中国は「爆買い」として見られてきた旺盛な消費意欲など、滞在日数や購買意欲の違いの影響も大きい。
     
  • 消費額の内訳を見ると、コト消費志向の高い欧米などの訪日客が増える中で2019年に34.5%を示した「買い物代」(モノ消費)は2023年では26.5%へ低下したが、足元で中国の回復傾向が強まる中で29.2%まで上昇している(2024年1-3月)。今後の更なる回復でモノ消費比率はコロナ禍前の水準まで高まる可能性がある。
     
  • 今後、リピーターも増え、過去と比べて滞在日数が長期化する中でインバウンド消費を増やすためにはモノを買うというよりも日本ならではの体験(コト)消費の需要に注目すべきだ。一方で宿泊・飲食サービス業では人手不足が深刻であり、供給不足による機会損失が生じている。効率的な労働投入や業務の効率化に加えて、付加価値の向上など多方面から労働生産性の向上を図る必要がある。


■目次

1――はじめに~2023年末の時点でコロナ禍前より訪日外客数は1割増、消費額は4割増
2――訪日外客数
  ~能登半島地震の影響は全体では軽微、中国は改善傾向、米・豪は円安効果で増加
3――訪日外国人旅行消費額~コロナ前の1.5倍、円安で1人当たり消費額が2倍の国も
4――訪日外国人旅行消費額の内訳~訪日中国人観光客の回復でモノ消費は3割へ
  1|全体の状況
   ~中国からの訪日が回復傾向でモノ消費が増加傾向、足元でモノ消費3割・コト消費7割
  2|訪日中国人観光客の状況
   ~モノ消費意欲が旺盛で足元で「買い物代」が45%、全体より+約15%
5――おわりに
  ~強まる需要に対して供給不足による機会損失も、多方面からの生産性向上策に期待

生活研究部   上席研究員

久我 尚子(くが なおこ)

研究領域:暮らし

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴

プロフィール
【職歴】
 2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
 2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
 2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
 2021年7月より現職

・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

【加入団体等】
 日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
 生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

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