(3)半導体投資拡大がもたらすオフィス需要への影響
AI 技術の進展等に伴い、半導体市場の拡大が期待されている。半導体関連製造業において、九州地方は以前から高いプレゼンスを誇り、「シリコンアイランド」と呼ばれる。九州地方の2023年の集積回路(IC)の生産額は前年比+24%増加の1兆1533億円となり、16年ぶりに1兆円を超えた
11。
九州経済調査協会の調査によれば、九州での半導体関連の設備投資は6.0兆円以上が予定されている
12。また、同協会は、半導体関連の設備投資の経済波及効果は10年間で約20.1兆円に達すると推計している。
九州地方の中核都市である福岡には半導体関連企業が集積している。経済産業省「九州半導体関連企業サプライチェーンマップ」によれば、福岡県内に所在する半導体関連企業・事業所は「456」に達する。
近年でも、福岡中心部の新築オフィスに拠点を開設する動きがみられる。世界最大の半導体受託製造会社であるTSMCの熊本工場の運営会社に出資するソニーセミコンダクタソリューションズは、「博多イーストテラス(2022年竣工)」に福岡オフィスを2022年9月に開設した
13。また、台湾の大手銀行である玉山銀行はTSMCの進出を機に、「天神ビジネスセンター」に福岡支店を2023年9月に開設した
14。
また、福岡県は、2023年8月に九州・全国の半導体人材不足に対応するため、半導体分野やデジタル産業分野の重要技術に精通した人材を育成する「福岡半導体リスキリングセンター」を福岡市早良区百道に開設した。
経済産業省「半導体デジタル産業戦略」によれば、政府は、国内で半導体を生産する企業の合計売上高を2020年の5兆円から2030年までに15兆円超に拡大することを目標としており、設備投資への助成金等の支援策を開始している。今後、半導体関連の設備投資や企業進出が活発化することで、福岡のオフィス需要の高まりが期待される。
11 朝日新聞「九州のIC生産16年ぶり1兆円超え TSMC効果でさらに増加視野」(2024年2月21日)
12 河村奏瑛、岡野秀之「九州における半導体関連設備投資による経済波及効果の推計~九州地域間産業連関表を用いた分析~」九州経済調査月報 2024年1月
13 ソニーセミコンダクタソリューションズグループHP
14 JETROビジネス短信「台湾の玉山銀行、日本第2拠点の福岡支店開設を祝う式典開催」(2023年9月4日)