「横浜オフィス市場」の現況と見通し(2024年)

2024年03月27日

(吉田 資) 不動産市場・不動産市況

1.はじめに

横浜のオフィス市場は、コロナ禍以降、空室率は上昇基調で推移しており、成約賃料は弱含んでいる。今後も、みなとみらい21地区や関内地区を中心に複数の大規模開発計画が進行中であり、市場への影響が注目される。本稿では、横浜のオフィス市況を概観した上で、2028年までの賃料予測を行う。

2.横浜オフィス市場の現況

2.横浜オフィス市場の現況

2-1.空室率および賃料の動向
横浜市のオフィス空室率は、2020 年4月の緊急事態宣言の発令以降、上昇基調で推移している。三鬼商事によると、2024年2月時点の空室率は6.5%(2020年4月対比+4.6%)に上昇した(図表-1)。

また、需給バランスの緩和に伴い、成約賃料は弱含んでいる。三幸エステート・ニッセイ基礎研究所「オフィスレント・インデックス」によれば、横浜市の成約賃料は、2021年上期をピークに下落傾向で推移しており、2023年下期は前年比▲5.6%となった(図表-2)。
賃料と空室率の関係を表した横浜市の賃料サイクル1は、2012年下期を起点に「空室率低下・賃料上昇」の局面から「空室率上昇・賃料上昇」の局面を経て、2022年上期からは「空室率上昇・賃料下落」の局面へ移行している(図表-3)。
 
1 賃料サイクルとは、縦軸に賃料、横軸に空室率をプロットした循環図。通常、(1)空室率低下・賃料上昇→(2)空室率上昇・賃料上昇→(3)空室率上昇・賃料下落→(4)空室率低下・賃料下落、と時計周りに動く。
2-2.需給動向
三鬼商事によると、横浜ビジネス地区における2023年末の賃貸可能面積(総供給面積)は、89.5万坪となり、前年末から+2.9万坪増加した。

これに対して、賃貸面積(総需要面積)は、83.4万坪(前年比+1.2万坪)となった。この結果、横浜ビジネス地区の空室面積は6.1万坪(前年比+1.7万坪)となり前年から+37%増加した(図表-4、5)。
2-3.エリア別動向
2023年末時点で賃貸可能面積が最も大きいエリアは「みなとみらい21地区(34.1%)」で、次いで「横浜駅地区(24.3%)」、「関内地区(24.1%)」、「新横浜地区(17.6%)」の順となっている(図表-6)。

地区別にみると、賃貸可能面積、賃貸面積、空室面積ともに、「みなとみらい21地区」で大きく増加した一方、その他の地区は概ね横ばいであった(図表-7)。
エリア別の空室率(2024年2月末)をみると、「みなとみらい21地区10.5%(前年比▲0.6%)」、「新横浜地区8.0%(同+0.2%)」、「関内地区4.1%(同▲0.1%)」、「横浜駅地区3.5%(同+0.1%)」となり、エリア間で格差が生じている(図表-8 左図)。

また、エリア別の募集賃料(2024年2月時点)は、「みなとみらい21地区(前年比▲2.2%)」が相対的に高水準ながら下落する一方、その他の地区は全て上昇し、特に「新横浜地区(同+3.4%)」の上昇率が大きくなった(図表-8右図)。

金融研究部   主任研究員

吉田 資(よしだ たすく)

研究領域:不動産

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

経歴

【職歴】
 2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
 2018年 ニッセイ基礎研究所

【加入団体等】
 一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)

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