Amazonが検索結果ページを広告で埋めることで、顧客はより低価格の商品を探すことが難しくなり、より高価な商品を買わされるようになったとFTC等は主張する。他方、顧客の1クリックごとに広告主はコストを支払わなければならないため、販売者は通常の販売手数料のほか、広告がクリックされることによる多くのコストを支払う必要が生じた。
Amazonの内部調査ではより多くの広告を掲載することは顧客のコストを上昇させるだけではなく、購入率を下げ、検索結果が利用されないことを増やすとの結果であった。これは顧客の購買を減少させるが、短期的には広告収入がそれを大きく上回るとした。この販売手数料の減少と広告料による収入の上昇はトレードオフの関係にあるが、Amazonは競合社に顧客を奪われずに顧客の購買体験を悪化させている。
ここでは検索結果の品質を下げて、顧客の購買体験を犠牲にしても競合社に顧客を奪われることがなかったことをFTC等は主張しており、これが「制限された産出量と超競争的な価格」に該当すると主張する
22。
21 前掲注1 p75参照。
22 収益が減少しなければ販売量が減少しても、「制限された産出量と超競争的な価格」に該当するかどうかは議論の余地があると思われる。
2|Amazonは自社のプライベートブランドを販売者の上に置くことで検索品質を下げる
Amazonは自然な検索結果の上に「専門家による推薦」などと表示される、お勧め表示欄(Amazonのプライベートブランドが表示される)を設けることで検索の品質をさらに下げている
23。お勧め表示欄の存在によって、販売者はAmazonにより抑圧されることでイコールフッティングの競争ができず、逆にプライベートブランドは作為的に押し上げられる。
もともとAmazonのプライベートブランドと他の類似商品は自然な検索結果の中で競争をしていたが、Amazonはこの戦いに敗れた。このためAmazonはお勧め表示欄に自社プライベートブランドを掲載することとした。Amazonがバイアスのかかったお勧め表示欄によって検索品質を下げたにもかかわらず、多くのビジネスを失わなかったことや行動を変えなかったことは独占力を示すものであるとする。
この項目も前項1|と同じ主張である。
23 前掲注1 p79参照。
3|Amazonは販売者に対する価格をあげたにもかかわらずビジネスを失わなかった
当初、Amazonでは販売者には紹介・販売手数料しか要求していなかった。しかし現在では、広告されている商品は広告されていない商品の46倍もクリックされている。したがって販売者にとっては広告料の支払いは必須となった。そのほか、様々な手数料を徴収することでAmazonは顧客を失わずに価格を上昇させた
24。
AmazonはFBAの料金を2020年から2022年の間に30%も値上げした。FBA契約をすることは販売者がAmazonで成功する前提条件である(後述7-3|)。
広告料やFBAに要するコストなどによって販売者の収入から徴収する割合(take rateという)を劇的に増加させた。このtake rateは2014年に27.6%であったが、2022年には■(訴状では伏字となっている)%まで増加した。結果としてAmazonは販売者の収入が2ドルあるとすると、1ドル近く徴収していることとなる(=つまり■は50%前後ということになろう)。しかし、販売者はAmazonに依存しているため、Amazonの要求に従わざるを得ない。
販売者の利益は元々薄く、Amazonの費用増加によって全く利益が出ないか出ても少額にとどまる。2021年の調査でAmazonのコストと収益性に対して満足している販売者の割合は10%を切っている。
多くの販売者はAmazonに対して好意的な見方をしていないが、引き続きAmazonを利用する。それは現実的な選択肢がないからだ。Amazonは突然かつ恣意的に販売者のアカウントを停止したり、在庫を没収したりする。販売者は常に恐怖の中にいるとFTCは主張する。。
ネットワーク効果が逆回転する、すなわち販売者が離脱すると顧客も減少することになる。しかし、Amazonは販売者の支払手数料を販売者の数を減らすことなく引き上げることに成功している。これは「制限された産出量と超競争的な価格」に該当するとFTC等は主張する。
24 前掲注1 p81参照。
7――Amazonによる違法な独占力維持行為