以下、具体的な施策を見ていくと、切れ目のない支援体制の構築では、妊娠届出時と妊娠8カ月頃、出産後に相談を受け付ける「伴走型相談支援」を児童福祉法の事業に位置付ける点が規定された。さらに、退院直後の母子を対象に心身のケアや育児を支援する「産後ケア事業」に関しても、全世帯を対象に2023年度から始めた利用者負担の軽減措置を継続する点とか、子ども・子育て支援法の地域子ども・子育て支援事業として位置付ける点なども盛り込まれた。
このほか、▽1カ月児・5歳児に対する健康診査と、先天性代謝異常などを調べる「新生児マススクリーニング検査」の対象疾患の拡充を早期に全国展開、▽聴覚障害の有無を早い時期に発見する「新生児聴覚検査」に関して、公費(税金)負担の全国実施――などの施策も列挙された
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妊娠前から妊娠・出産後まで、女性が健康で活躍できるようにするため、国立成育医療研究センターで女性の健康や疾患に特化した研究とか、将来の妊娠を考えつつ女性やカップルが自分達の生活や健康に向き合う「プレコンセプションケア」、産後ケア事業を含む成育医療などの研究を進めるとともに、基礎疾患を持つ妊産婦や妊娠を希望する女性などに対する相談支援を強化するとしている。
就学前の子どもをカバーする保育や幼児教育の関係では、サービスの質を高める観点に立ち、保育士1人が対応する児童の数を定めた「職員配置基準」のうち、1歳児と4~5歳児の基準を見直すことが示された。
具体的には、制度発足以来 75 年間、一度も改善されてこなかった4~5歳児の配置基準について、現行の30人(30:1)を25人(25:1)に引き下げるとともに、それに対応する加算措置を創設するとされた。1歳児に関しても、3年間の加速化プラン期間中の早い段階で、6人(6:1)から5人(5:1)に改善する方向性が盛り込まれた。病児保育に関する単価を2024年度から引き上げる方針も盛り込まれた。
このほか、▽保育所、幼稚園、幼保一体型の「認定こども園」の運営費の基準となる公定価格の改善に向けた取り組みの推進、▽保育士の処遇改善、▽会計の見える化に向けて、事業所から都道府県に対する経営情報の報告と、都道府県による分析結果の公表を法定化――なども提示された。
子ども・子育て支援法に関する施策では、月の一定時間までの利用可能枠の中で、就労要件を問わずに柔軟に利用できる「こども誰でも通園制度(仮称)」を創設する方針も示された。具体的には、2025年度から実施自治体の増加を図った上で、2026 年度から全国の自治体で実施できるように、2024年通常国会に関連法改正案を提出する旨が打ち出された。同制度に関しては、2023年度補正予算でモデル事業の実施に必要な予算が計上されている。
さらに、保護者が仕事などで昼間、家を留守にしている間、放課後の小学生を小学校の空き教室や児童館など預かる「放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)」に関しても、待機児童が依然として1.5万人程度存在するとして、約122万人から約152万人に拡大するとした「新・放課後子ども総合プラン」の着実な推進とともに、2024 年度から常勤職員配置の改善などを図る方針が示された。
このほか、多様な支援ニーズへの対応として、ひとり親家庭の自立と子育て支援、こどもの貧困対策、児童虐待の防止対策、障害児支援などが列挙されている。
このうち、ひとり親家庭の自立とか、こどもの貧困対策の関係については、▽ひとり親家庭や低所得子育て世帯のこどもに対する伴走的な学習支援の拡充、▽貧困家庭への宅食提供、▽地域の様々な場所を活用しつつ、安全・安心で気軽に立ち寄れる食事や体験・遊びの機会の提供、▽看護師・介護福祉士などの資格取得を目指すひとり親家庭の父母に対する「高等職業訓練促進給付金制度」について、短期間で取得可能な民間資格を含む対象資格への拡大、▽幅広い教育訓練講座の受講費用を助成する「自立支援教育訓練給付金」に関する助成割合の引き上げ、▽ひとり親に対する就労支援事業などの対象要件拡大――といった施策が示された。児童扶養手当の所得限度額について、3人以上の多子世帯の加算額を拡充するため、関連法改正案を2024年通常国会に提出する方針も打ち出された。
近年、増え続けている児童虐待の防止とか、子育てに困難を抱える世帯、保護者や兄弟姉妹などをケアする子どもを指すヤングケアラーに対する支援を強化する観点に立ち、相談支援体制の構築などの体制整備、子どもと子育て家庭に関する総合相談窓口として一部の自治体で設置されている「こども家庭センター」の全国展開、学校や地域とのつなぎ役の配置、子育て世帯への訪問支援などを進めることも盛り込まれた。
このほか、健診未受診の妊婦に対する継続的な訪問支援、生活に困難を抱える特定妊婦に対する一時的な住まいの提供、こどもの養育に関する相談・助言、虐待などで家庭に居場所を持てないこども・若者の支援拡充や宿泊できる安全な居場所の確保なども列挙。虐待などを受けたこどもの生活環境整備として、一時保護施設における小規模ユニットケア化、一時保護施設や児童養護施設などに入所しているこどもの学習環境整備の支援、こどもの権利擁護の環境整備、親子関係の再構築支援、家庭養育環境を確保するための里親委託の推進、養育に関する助言などの支援策、社会的養護を経験した若者が自立した社会生活を送れるようにするための支援なども言及された。
障害児や人工呼吸器などが必要な「医療的ケア児」に対する支援策としても、障害児支援の中核的役割を担っている「児童発達支援センター」を中心とした専門的な支援の提供とか、地域の障害児支援事業所や保育所などへの支援に加えて、医療的ケア児を一時的に預かる環境の整備や保育所などでの受け入れ体制の整備も図るとされた。障害児に関する補装具費支給制度の所得制限を撤廃する方針も示された。
7 なお、新生児マススクリーニング検査に関しては、免疫の機能不全で重篤な感染症を繰り返す「SCID(重症複合免疫不全症)」と脊髄の異常で筋力低下などを招く「SMA(脊髄性筋萎縮症)」という2つの疾患について先行的に事業を実施したり、検査の対象疾患の拡充を検証したりするためのモデル事業が2023年度補正予算で計上されている。