中国経済の現状と注目点-23年の実質GDP成長率は+5.2%。政府目標は達成するも回復力は依然弱い

2024年01月26日

(三浦 祐介) 中国経済

■要旨
 
  1. 第4四半期(10-12月期)の経済成長率は実質で前年同期比+5.2%と、前期(7-9月期)の同+4.9%から伸びが加速した(下左図)。他方、季節調整後の前期比では+1.0%と、前期の+1.5%から減速している。2023年通年では、前年比+5.2%となり、政府が目標としていた「+5%前後」が達成されたが、改善の歩みは一進一退であり、全体としては依然自律的回復力を欠く状況にある。
     
  2. 需要項目別の寄与度を見ると、第4四半期の最終消費はGDP成長率に+4.2%ポイントの寄与となった。小売売上高は、前年のゼロコロナ規制強化による落ち込みの反動を踏まえると、依然勢いが弱い。総資本形成(≒投資)は+1.2%ポイントの寄与となった。製造業の投資が堅調だが、不動産開発投資の低迷が重石となっている。純輸出は、▲0.2%ポイントとマイナス寄与が前期から縮小し、外需の下押しは弱まりつつある。
     
  3. 産業動向を見ると(下右表)、「宿泊飲食業」や「情報通信・ソフトウェア・IT」が年初来2桁の伸びを続けている一方、「不動産業」は▲2.7%と、3四半期連続でマイナス成長を続けており、不動産市場が依然不安定な状況にあることがうかがえる。
     
  4. 2024年は、上述の通り経済が依然力強さを欠くなか、どのような経済対策がとられるのか、その効果によって経済が自律的な回復力を取り戻すことができるか否かが注目点となるだろう。3月に開幕する全国人民代表大会で、成長率目標が「+5%前後」で据え置かれるか、財政赤字の規模が従来上限とされたGDP比3%を上回るか等、経済政策のスタンスを読むうえでポイントとなる。リスクとしては、不動産市場や地方政府財政の悪化、中小金融機関の経営悪化等の国内金融リスクのほか、地政学リスクの動向が挙げられる。

 

経済研究部   主任研究員

三浦 祐介(みうら ゆうすけ)

研究領域:経済

研究・専門分野
中国経済

経歴

【職歴】
 ・2006年:みずほ総合研究所(現みずほリサーチ&テクノロジーズ)入社
 ・2009年:同 アジア調査部中国室
 (2010~2011年:北京語言大学留学、2016~2018年:みずほ銀行(中国)有限公司出向)
 ・2020年:同 人事部
 ・2023年:ニッセイ基礎研究所入社
【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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