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産業界に先駆けていち早く新型コロナのBCP対策として大規模導入した在宅勤務
同社グループでは、緊急時におけるサービスの継続・安定運営の実現を重要事項と捉え、東日本大震災の発生以降、様々な有事に備えて日常的にBCPの構築に積極的に取り組んでおり、独自の判断基準に基づき迅速に意思決定ができる体制を整えてきた。その一環で、全従業員
10による一斉在宅勤務の訓練を毎年定期的に実施しており、これにより、セキュアな環境下で社内システムにアクセスする手段の整備および電話・インターネット・衛星回線などを介した複数の手段を用いた社内外のコミュニケーションを平常時より確立してきている
11。筆者は、2021年拙稿にて「パンデミックや災害時のBCPとして在宅勤務を導入・実施する際に、従業員がいつでもスムーズにストレスなく在宅勤務に移行できるように、日頃からの準備・訓練の実施が欠かせない」と指摘したが、同社では、そのことが東日本大震災以降、日常的・定期的に実践されてきた。
新型コロナ対応の初動として、新型コロナが日本で初めて検出された2020年1月16日に、同社グループの経営陣で構成される災害対策本部(緊急対策本部)を早くも立ち上げ、同本部は、全従業員に向けて新型コロナに対する注意喚起メールを配信している。その配信内容は、冬季休暇や直近で武漢およびその周辺地域に渡航した従業員は速やかに医療機関を受診し、災害対策本部事務局宛てに連絡すること、事態収束まで対象地域への出張を禁止することである
12。続いて1月26日(日曜日)には在宅勤務を同本部にて意思決定し、即全グループへ発動し4,000名の従業員をいち早く在宅勤務にした
13。このことから、同社グループは、早くも2020年1月の時点で新型コロナ対応を当初からBCP対策と明確に位置付けていたことがうかがえる。一方、産業界では、政府の1回目の緊急事態宣言(2020年4~5月)が4月7日に発出される直前くらいに、初めて新型コロナに対するBCP対応が必要と感じた企業が多かったのではないだろうか。
具体的には同社グループは、新型コロナの感染拡大の可能性を考慮し、事業継続および従業員の安全確保を目的に、2020年1月27日から、中国をはじめ海外からの訪日客の多い渋谷区、大阪市、福岡市のオフィスに勤務する約4,000名
14(国内従業員の9割に当たる)を対象に原則在宅勤務とする体制を産業界に先駆けていち早く敷いた
15。「新型コロナウイルスの感染拡大を受け、4,000人規模で一斉在宅勤務へ踏み切った企業は(※同社が)日本で初めて」
16であるという。GMOインターネットグループ代表取締役グループ代表の熊谷正寿氏(以下、熊谷代表)は、「この決定を発表した1月26日の時点では、国内で感染が確認されたのはわずか4人でした」「いち早く対応できたことは、私たちが長年続けてきた事業継続計画(BCP)の整備と訓練の成果だと考えています」
17と述べている。
在宅勤務命令を発令した当初は、この体制は2020年1月27日から2週間を目途とするとしていたが、その後、同年2月10日より新型コロナ感染流行の長期化に備えた体制へ移行することを決定し、具体的には在宅勤務体制を継続しつつ、業務上やむを得ず出社が必要な従業員については、身を守るための感染予防グッズの配布と出社時・在社時の予防策の徹底により一部出社を認める体制とした
18。
国内主要オフィス(渋谷区・大阪市・福岡市)に続き、国内の他のオフィスについても2月、3月に順次在宅勤務体制へ移行した。同年4月7日に緊急事態宣言(1回目)が発令されて以降は、一部出社を認めていた対象も、事業継続に必要な最優先の業務のみに限定し、原則在宅勤務とする体制を敷いていた
19。
10 GMOインターネットグループでは、従業員を「パートナー」と呼んでいるが、本稿では従業員と記載することとした。
11 GMOインターネットグループPRESS RELEASE 2020年1月26日「新型コロナウイルスの感染拡大に備え在宅勤務体制へ移行」、同2020年2月7日「新型コロナウイルス感染流行の長期化に備えた体制へ移行 在宅勤務の継続と、オフィス出社時の感染予防対策を拡充」を基に記述した。
12 「GMOインターネットグループの対応:2020年1月16日(木)災害対策本部より全パートナーに向けて注意喚起メールを配信」GMOインターネットグループホームページ『新型コロナウイルスに関するグループの取り組みと関連リンク集』を基に記述した。
13 「4000人を在宅勤務にした判断について」『クマガイコムⓇ』(GMOインターネットグループ代表取締役グループ代表 熊谷正寿氏のブログ)2020年1月29日より引用。
14 2019年12月末の同社グループ全体の従業員数は、5,238名(外数として平均臨時雇用者数370名)。
15 GMOインターネットグループPRESS RELEASE 2020年2月7日「新型コロナウイルス感染流行の長期化に備えた体制へ移行 在宅勤務の継続と、オフィス出社時の感染予防対策を拡充」、同2020年3月13日「新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、在宅勤務の対象を拡大」を基に記述した。
16 GMOインターネットグループPRESS RELEASE 2020年2月28日「在宅勤務に関するアンケートを実施」より引用。(※ )は筆者による注記。
17 ITmedia 2022年2月1日(提供:デル・テクノロジーズ)「オフィスは手放すべき? GMO熊谷代表が解説する『テレワークとの付き合い方』」より引用。
18 GMOインターネットグループPRESS RELEASE 2020年2月7日「新型コロナウイルス感染流行の長期化に備えた体制へ移行在宅勤務の継続と、オフィス出社時の感染予防対策を拡充」を基に記述した。
19 GMOインターネットグループPRESS RELEASE 2020年5月25日「withコロナ時代における『新しいビジネス様式 byGMO』へ移行」より引用。