日本の主な死因の変遷を見ると、戦後しばらくは、結核の占める割合が比較的大きかった。しかし、1951年の結核予防法施行を受けた食生活や衛生環境の改善、予防接種(BCG)の義務化、ストレプトマイシンなどの治療薬の普及等により、結核の死亡率は大きく低下した。現時点で、将来の気候変動に伴う死亡率の変化をみるうえで、1950~60年代の結核を取り上げる必要性は乏しいと考えられよう。
現実的には、気候指数を1971年以降について設定しているため、これに合わせて、死亡数も1971年以降とすることが妥当であろう。これにより、結核等の影響の大きかった戦後約25年間の死亡動向は除外されることとなる。
3|死亡数は、都道府県別データをもとに年齢群団と死亡月の按分処理を施す
死亡数のデータは、「人口動態統計」(厚生労働省)をもとにすることが適切と考えられる。この統計では、まず、市区町村の役所に提出される出生届や死亡届等をもとに、出生票や死亡票等が作成される。すなわち全数調査に基づく統計であり、現在は統計法に基づく基幹統計となっている
6。届出は、戸籍法および死産の届出に関する規程に基づいており、公的統計としての信頼度は極めて高い。
人口動態統計は、毎年、確定数が上・中・下巻の3つに分けて公表されている。このうち、死亡については、下巻の第2表、第3表、第4表に、次のように統計データがまとめられて、公表されている
7。
第2表 : 死亡数,死因(死因簡単分類)・性・年齢(5歳階級)別
第3表 : 死亡数,死因(死因簡単分類)・性・死亡月別
第4表 : 死亡数,死因(死因簡単分類)・性・都道府県別
死亡数が死因と性別ごとに分かれて表示されている点は、3つの統計表すべてに当てはまる。ただし、死亡時の年齢については第2表、死亡した月については第3表、死亡した地域(都道府県)については第4表、に分かれてまとめられている。
そこで、性別、年齢群団別、月別、都道府県別、死因別の死亡数については、この3つの表をもとに、按分処理をして算定する。具体的には、第4表の性別、都道府県別、死因別のデータに、第2表から得られる当該年齢群団の割合と、第3表から得られる当該月の割合を掛け算して、5つの区分別の死亡数データを算定する。
なお、第2表には、年齢が不詳のケースがあるが、それらについては死亡数の割合計算に用いないこととする。
また、第4表については、死亡した都道府県が不詳のケースや、外国で死亡したケースが存在する。ただし、それらのケース数は限定的である
8ため、今回の死亡数データからは除くこととする。
6 人口動態統計の沿革によると、人口動態調査は、明治31年(1898年)「戸籍法」が制定され登録制度が法体系的にも整備されたのを機会に、同32年(1899年)から人口動態調査票は1件につき1枚の個別票を作成し、中央集計をする近代的な人口動態統計制度が確立した。その後、昭和22年(1947年)6月に「統計法」に基づき「指定統計第5号」として指定され、その事務の所管は同年9月1日に総理庁から厚生省に移管された。さらに、平成21(2009年)年4月からは、新「統計法」(平成19年法律第53号)に基づく基幹統計調査となった。
7 1970年代の統計表については、表番号が現在と異なり、下巻第1表~第3表にまとめられている。
8 例えば、2021年の死亡数143万9856人のうち、不詳は781人(全体に占める割合は0.05%)、外国は93人(同0.006%)。