まずは、シングル高齢者の住宅の状況からみていきたい。住宅は、結婚や子の誕生、離婚、子の独立など、ライフイベントがきっかけで住み替えることが多いことから
2、配偶関係による差が大きいと予測できる。
まず男性についてみると、配偶関係間で差が目立つのは「賃貸住宅(借家など)」の割合である。「未婚」では全体の4割を占め、「離別・死別」でも2割を超えるが、「配偶者あり」では1割にも満たない。当然だが、年収が減る老後も賃貸料がかかり続けるため、家計の負担が長く続くことになる。
代わりに、戸建てマイホームと言える選択肢「戸建て(自分または配偶者名義、住宅ローン支払い中)」と「戸建て(自分または配偶者名義、住宅居ローン支払いなし)」の合計をみると、「配偶者あり」では8割を超えるのに対し、「未婚」では約5割、「離別・死別」では約6割となっている。未婚でも半数がマイホームを持つのは意外に思えるが、家族がいない人が、わざわざ戸建てを自ら購入するとは考えにくいため、親から相続して自身に名義変更したケースも多いのではないだろうか。
また、いずれの配偶関係でも、「戸建て(自分または配偶者名義、住宅居ローン支払いなし)」が最大になっているが、年金生活になっても、ローンの無い住宅を確保できているから安泰、とは限らない。老化して足腰が弱くなると、手すりをつけるなどのバリアフリー工事が必要になったり、家屋が老朽化すると修繕工事が必要になったりするからである。一般社団法人「住宅リフォーム推進協議会」の調査によると、住宅リフォームに実際にかかった費用(築10年以上)は、一戸建ての場合は約350万円、マンションの場合は約330万円に上るという
3。要介護認定を受けていれば、バリアフリー工事には介護保険サービスを利用できる場合もあるが、いずれにせよ、イレギュラーな出費は発生する。
また、「戸建て(両親など配偶者を除く家族名義)」も「未婚」と「離別・死別」では1割弱いた。親名義の実家で、親と同居しているケースなどが考えられるが、名義人である親等が死亡すると、相続などが発生し、そのまま住み続けられるか、転居が必要になった場合、高齢になってから新たに賃貸住宅を確保できるか、という問題が発生する可能性がある。なお、数は少ないが、「その他」の内訳には、兄弟・姉妹と同居しているケースがある。
次に女性をみると、やはり配偶関係間で「賃貸住宅(借家など)」の差が目立つ。「未婚」では2割強、「離別・死別」では2割弱であるのに対し、「配偶者あり」では1割弱である。ただし、男性に比べると、いずれも割合は小さかった。
賃貸住宅の代わりに、シングル女性の方がシングル男性よりも割合が大きかったのが、「戸建て(両親など配偶者を除く家族名義)」である。「未婚」と「死別・離別」では、それぞれ2割弱に上った。上述したような相続等の問題は、シングル女性の方が、より多く発生しそうである。
戸建てマイホームと言える「戸建て(自分または配偶者名義、住宅ローン支払い中)」と「戸建て(自分または配偶者名義、住宅居ローン支払いなし)」の合計は、やはり「配偶者あり」(約8割)ほどではないが、「未婚」(約5割)と「離別・死別」(約6割)でも最多だった。こちらも、親から相続して名義変更したケースが多く含まれるのではないだろうか。