2|今回の改革内容についての説明
収集された証拠は、コンサルテーションで提示された提案の大部分を支持したため、政府はこれらの提案を前進させることとしている。
議論の中で最も困難だったのは、適格要件とファンダメンタル・スプレッドの両方を含むマッチング調整についてであったが、様々な異なる意見を考慮した結果、政府は、マッチング調整の適格要件を、協議文書に示された提案に加えて、PRAが実施する多くのセーフガードを条件として、予測可能なキャッシュフローの高い資産を含めることを認めるよう拡大すべきであるという結論に達した。
2022年4月のコンサルテーション・ペーパーで示されたように、ファンダメンタル・スプレッドの改革に関する最良のアプローチについてのコンセンサスは得られていない。政府は改革のケースを慎重に検討し、提示された様々なオプション(PRAによる多くの提案を含む)の予想される影響を分析した結果、ファンダメンタル・スプレッドの設計とキャリブレーションを現在のままにすることを決定した。しかし、現行のファンダメンタル・スプレッド・アプローチのリスク感度を高め、主要な信用格付けの中で異なるノッチ付き引当金を設定できるようにする(例えば、AA+やAA-とAAを比較した場合の引当金を異なるものにする)予定である、とした。
ファンダメンタル・スプレッドに関するこれらの措置により、マッチング調整に関する他の変更と合わせて、保険会社が生産的な資産への投資を増やし、英国経済を活性化させることができるようになる。政府は、ファンダメンタル・スプレッド改革に関するPRAの提案を進めないことを決めたが、契約者保護の重要性を認識しており、このことを念頭に置き、法律で定められたルールが規制当局の持つ監督上の手段と密接に連携して機能しなければならないと認識している、とした。
したがって、政府は、PRA が以下の追加的な措置を講じるために必要な権限を有することを確保し、PRAが安全性と健全性及び保険契約者保護を維持する責任を保険会社に負わせるためにこれらの措置を使用することを支持することを明確にすることによって、PRAを支援する。また政府は、保険者が常に高水準のリスク管理を行い、これらの監督手段の活用についてPRAに全面的に協力することを期待し、PRAを支持する。PRAはこれらのツールを法律と整合的に使用し、PRAのリスク許容度を満たすためにどの程度機能しているか議会で報告することになる。また、以下の追加措置を支持する。
・PRAが定めるシナリオに対する保険者の耐性をテストするために、PRAが定めるストレステストに定期的に参加することを保険者に要求し、PRAが個々の会社の結果を公表することを認める。
・上級管理職制度の下で正式な規制責任と制裁を負う指名された上級管理職が、上記のストレステストの結果を含む、マッチング調整ポートフォリオに含まれる資産の特性と価値の厳格な評価に基づき、自社の資産のファンダメンタル・スプレッドの水準が保有する全てのリスクを十分に反映し、結果として生じるマッチング調整が流動性プレミアムのみを反映しているかどうかをPRAに対して正式に証明することを義務付ける。
・保険会社が、上記の証明の裏付けとなる作業を考慮して標準的な許容範囲では不十分と判断した場合、追加的に高いファンダメンタル・スプレッドを適用することを認める。
・キャッシュフローが予測しやすい資産を含めるために適格要件を拡大するという政府の決定を反映し、マッチング調整規則を適切に更新する(例えば、非固定キャッシュフローによる追加リスクを考慮したファンダメンタル・スプレッド許容値の引き上げ、ポートフォリオの制限等を規定する)。
なお、マッチング調整の重要性とソルベンシーII規則の広範な改革を考慮し、政府はPRAにマッチング調整の使用を綿密に調査するよう要請している。政府は5 年後にファンダメンタル・スプレッドのキャリブレーションが引き続き適切であるかどうかを見直す予定である。政府の見直しに先立ち、PRAは上記の追加措置の影響を含むソルベンシーII改革の法定目的への影響に関する評価と、さらなる変更が必要かどうかに関する評価を行う予定である。政府は、見直しを行う際にPRAの評価結果を考慮することになる。PRAはまた、FCA(金融行動監視機構)と共同で、政府の改革を反映して、保険会社に対する金融サービス補償制度(FSCS)やその賦課金に変更が必要であるかどうかを評価するためのレビューを行う予定である。
政府は、特に以下を含めて、必要に応じて立法を行う。
・最近の経済情勢のもとで、定期金支払いを含む長期生命保険事業のリスクマージンを65%、損害保険事業のリスクマージンを30%削減し、修正資本コスト法
12での計算を可能にするように、変更することを保証する。
・ファンダメンタル・スプレッドの既存の方法論とキャリブレーションを維持しつつ、ノッチ付き格付けの使用を可能にする。
・PRAが実施するファンダメンタル・スプレッド許容値とセーフガードの調整を条件として、マッチング調整の適格基準を拡大し、予測可能性の高いキャッシュフローを持つ資産を含むようにする。
政府は、PRA と協力して、PRAのルールブック及びその他の要件に、以下の変更を加えることを可能にする。
・PRAが会社の内部格付について保証を求め、適切な場合には変更と調整を要求できるようにする。
・協議された他の投資の柔軟性を導入する。即ち、マッチング調整の対象となる負債を拡大し、マッチング調整ポートフォリオにおける投資適格(BBB)未満の格付けの資産に対する不釣り合いに厳しい取り扱いを撤廃する、マッチング調整の申請と違反の取り扱いにおける柔軟性を高める、PRAが申請のタイムラインと承認率について報告する仕組みを構築する等。
・高いモデリング水準を維持しつつ、要求事項の数を合理化し、PRAが会社のモデルの妥当性を評価する際に、より多くの監督上の判断を行うことができるように、会社の内部モデルに対する承認要件を更新する。
・報告義務や管理義務を軽減することにより、負担を軽減する。
・適切な資本を有する親会社を持つ外国企業に対する支店資本規制を撤廃する。
・保険会社に対する新たな動員体制を導入し、ソルベンシーUKの適用前に保険料と準備金の臨界値を少なくとも2 倍にする。
政府は、このパッケージの一部を法制化することで、保険会社が長期的に生産的な投資を行うために必要な規制の確実性を提供する。