高齢化と移動課題(上)~現状分析編~

2022年11月22日

(坊 美生子) 高齢化問題(全般)

■要旨

国内は高齢者数が3,600万人を超え、高齢化率(29.1%)は世界最高水準である。高齢者のうち前期高齢者はいったん減少に向かうが、75~84歳は2025年頃まで増加し続け、85歳以上は2035年には1,000万人を突破する見込みである。このような急速な高齢化に伴い、移動課題が深刻化している。主要なものは、高齢ドライバーによる事故リスク上昇と、高齢者の外出困難という二つである。改めて移動課題の要因を紐解くと、「身体的制約」、「心理的制約」、「環境的制約」、「経済的制約」という、主に四つに整理できる。身体的制約とは体力面や健康面の悪化、心理的制約とはコロナ禍で起きた外出自粛、環境的制約とは適切な移動サ-ビスの不足、経済的制約とは家計のゆとりのなさである。人間の老化を避けることはできないが、今後、高齢者がより安心して自分らしく暮らしていけるようにするには、これらの要因について理解し、公共交通や移動サービスを高齢者に寄せていけなければならないだろう。

■目次

1――はじめに
2――国内における高齢化の状況
  1|高齢化の加速と後期高齢者の増加
  2|要介護認定者の増加
3――高齢化による移動課題
  1|マイカー運転による交通事故リスクの上昇
  2|免許を持たない高齢者の外出困難
4――高齢化に伴う移動困難の要因
  1|身体的制約
  2|心理的制約
  3|環境的制約~移動サービスの不足~
  4|経済的制約
5――小括

生活研究部   准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任

坊 美生子(ぼう みおこ)

研究領域:ジェロントロジー(高齢社会総合研究)

研究・専門分野
中高年女性の雇用と暮らし、高齢者の移動サービス、ジェロントロジー

経歴

【職歴】
 2002年 読売新聞大阪本社入社
 2017年 ニッセイ基礎研究所入社

【委員活動】
 2023年度~ 「次世代自動車産業研究会」幹事
 2023年度  日本民間放送連盟賞近畿地区審査会審査員

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