(2)ランキング調査の結果
ランキングの上位30位を図表1に示した。前稿の道府県都・政令市編に比べると、対象の自治体数が少ないため、各項目の得点も小さくなった。
トップは「見守り、安否確認、声掛け」(74点)で、2位と15点差だった。各区の個別調査で「見守り、安否確認、声掛け」が回答率1位だったところはなかったが、新宿、墨田、江東3区の個別調査で2位、豊島区の個別調査で3位、江戸川区の個別調査で4位となるなど、多くの区で上位に入ったため、合計得点が上昇した。
道府県都・政令市編で6位だった「見守り、安否確認、声掛け」が、東京都区部編でトップに立った要因の一つとしては、単身高齢世帯の多さが影響した可能性がある。2020年国勢調査に基づいて推計すると、高齢者人口のうち単身世帯(一人暮らし)が占める割合は、全国平均では19%であるのに対して、東京都区部は28.4%であり、10ポイント近く上回っている。
ランキング2位は「買い物、移動販売、薬の受け取り」(59点)だった。この項目は、道府県都・政令市編でも同じく2位だった。食料品や日用品、医薬品など生活必需品の確保は、相対的に小売店が多いと思われる東京の都区部でも、高齢者にとっては切実な問題であることを示した。高齢者の食料品アクセスについては、都市部でも、大規模店が出店した影響で、徒歩圏内の食料品店が閉店したり、高級スーパーの立地が増えて手ごろな店が少ないなど、環境が悪いケースがあるためである。また、買い物した荷物が重くて持てない、という事情もある。
各区のニーズ調査の中にも、これらの問題点が示されていた。例えば、練馬区の個別調査では「日常生活の中での困りごと」という設問の回答率1位が「買い物(荷物を持って帰ることを含む)」であり、その理由は多い順に「荷物を運ぶことが難しい」、「買い物を手伝ってくれる人がいない」、「徒歩で行ける場所にお店がない」等となっていた
4。また板橋区の個別調査では、高齢者の4割近くが食品や日用品の買い物が「大変不便」「すこし不便」だと回答し、不便を感じている点は、多い順に「重いものが持てないため、一度に少量しか購入できない」「歩いて(または自転車で)買い物に行くのが体力的にきつい」「店までの距離が遠い」――となっていた。ランキング調査で23位となった「購入品の宅配、御用聞き」も、同じ負担感の現れだろう。
ランキング3位には「話し相手、友人関係、通いの場など交流の場の充実」(53点)がランクインした。筆者は繰り返し、高齢者にとって社会参加が心身機能維持のために重要であることを述べているが
5、高齢者自身も、張りのある生活を続けるために、他者との交流の充実を求めていることが示された。また、トップの「見守り、安否確認、声掛け」と合わせて考えれば、地域で安心して暮らし続けていくためには、緩やかなつながりや人的ネットワークを求めていると言えるだろう。
ランキング4位には「困りごとの相談窓口、情報収集」(47点)が入った。道府県都・政令市編では10位だったが、東京都区部では、より順位が高かった。
一方で、道府県都・政令市編では断トツ首位だった「送迎、公共交通の充実」は5位(42点)だった。地方に比べて、東京都区部では公共交通網が発達しているためだと考えられる。ただし、前述したように、2位の「買い物、移動販売、薬の受け取り」にも移動の要素は含まれており、移動手段へのニーズが小さいとは言えない。また、個別調査の設問の選択肢に、送迎や公共交通に関するものを設けていたのが、集計した17区のうち9区に留まった点も影響した可能性がある
6,7。
6位「居宅介護サービスの充実」(42点)には、デイサービスやショートステイなどの充実、訪問介護体制の充実などが含まれる。7位「調理」、9位「掃除」、15位「洗濯」など、日常的な家事支援に関するものも多かった。