アセットオーナーとESG投資~GPIFのESG活動報告を読む~

2021年09月28日

(德島 勝幸) 公的年金

■要旨

日本の年金運用において自家運用は限定的であり、ほとんどがアセットマネジャーに対する委託運用の形態で行われている。そのため、エンゲージメントの一部を除いて、アセットオーナーがESG投資に直接コミットする必要はないかのようにも見える。しかし、株式の運用のみならず、運用資産全体でESG要素を意識し、一気通貫したESG投資の体制を構築するには、アセットオーナーが投資方針等の形でESGを含めた哲学を示すことが重要である。そのためには、ESG指数を意識した運用の採用やSDGs債券への投資といった直接的なものだけでなく、スチュワードシップコードの受入れ、国連PRI原則への署名、あるいはTCFDへの賛同表明等、外形的にも明らかになる行動をとりつつ、具体的な年金運用の多くを行うアセットマネジャーとの連携が重要になって来る。

日本の年金運用においてESG投資を画期的に促進したのはGPIFによるPRI原則署名以降の流れであり、GPIFが毎年夏に公表する『ESG投資報告』は、追随する多くのアセットオーナーにとって極めて有効な参考になるだろう。体制の整備等を考えても、GPIFと同程度に取組むことは決して容易でないが、何をすべきかという観点からも有意義な示唆に富む。また、ESG投資の実践を担当するアセットマネジャー等にとっても、要求される水準を認識するため、重要な文書であることは言うまでもあるまい。

■目次

1――ESG推進に必須なアセットオーナーの取組み
2――GPIFによるESGへの取組み
3――GPIFによるESG活動報告
4――その他のアセットオーナーによESG投資への取組み

金融研究部   取締役 研究理事 兼 年金総合リサーチセンター長 兼 ESG推進室長

德島 勝幸(とくしま かつゆき)

研究領域:年金

研究・専門分野
債券・クレジット・ALM

経歴

【職歴】
 ・1986年 日本生命保険相互会社入社
 ・1991年 ペンシルバニア大学ウォートンスクールMBA
 ・2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社に出向
 ・2008年 ニッセイ基礎研究所へ
 ・2021年より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会検定会員
 ・日本ファイナンス学会
 ・証券経済学会
 ・日本金融学会
 ・日本経営財務研究学会

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