所有者不明土地への諸対策 (4)-遺産分割の期間制限

2021年06月22日

(松澤 登) 保険会社経営

■要旨

今回の民法改正によって、遺産分割の期間制限が設けられた。もともと相続財産の分割にあたっては配偶者や子など被相続人との親族関係に基づく法定相続分が定められている。実際に分割するにあたっては、相続人が相続財産の増加に貢献した場合の寄与分や、被相続人から生前贈与を受けている場合の特別受益を勘案して相続財産を分割することとされている(具体的相続分という)。
 
今回の改正では、相続開始後10年経過後には、この寄与分と特別受益による相続財産分割の主張を認めないこととした。したがって法律上は法定相続分によって相続分が確定することになる(全員の同意があれば異なる分割も可)。
 
法定相続分によって確定することのメリットとしては、シリーズ第2回で解説を行った共有財産についての所在等不明共有者の持分の取得や譲渡を行うことができる点が挙げられる。また共有財産の金銭的補償による分割を請求することができるので、他の相続人の同意がなくても共有物の分割を求めることができる。

■目次

1――はじめに
2――問題の所在
  1|相続財産の管理
  2|問題となるケース
3――遺産分割の期間制限
  1|特別受益・寄与分規定の不適用
  2|共有物分割・持分取得・持分譲渡
4――おわりに

保険研究部   専務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長

松澤 登(まつざわ のぼる)

研究領域:保険

研究・専門分野
保険業法・保険法|企業法務

経歴

【職歴】
 1985年 日本生命保険相互会社入社
 2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
 2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
 2018年4月 取締役保険研究部研究理事
 2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
 2024年4月より現職

【加入団体等】
 東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
 東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
 大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
 金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
 日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等

【著書】
 『はじめて学ぶ少額短期保険』
  出版社:保険毎日新聞社
  発行年月:2024年02月

 『Q&Aで読み解く保険業法』
  出版社:保険毎日新聞社
  発行年月:2022年07月

 『はじめて学ぶ生命保険』
  出版社:保険毎日新聞社
  発行年月:2021年05月

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