原油価格はコロナ前を回復~今後の注目点と見通し

2021年02月05日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

■要旨
 
  1. WTI先物は11月以降上昇を続け、足元では新型コロナ拡大前の昨年1月下旬以来の高水準にあたる56ドル台にまで回復している。
     
  2. 昨年秋以降に欧米などでコロナ感染が再拡大したことで、原油需要回復の足取りは鈍いものの、(1)ワクチン普及による先行きの需要回復が織り込まれたうえ、(2)OPECプラスによる大規模減産の継続とその順守、米シェールの生産停滞による供給の抑制、(3)金融緩和継続等に伴う投資家マインド改善が原油価格回復に複合的に寄与したと考えられる。
     
  3. 今後の注目材料として、需要サイドではワクチンの普及ペースと効果、変異種の動向が注目される。一方、供給サイドでは(1)米シェールの生産動向とバイデン新政権による石油開発規制の影響、(2)OPECプラスによる減産縮小ペースとサウジの出方、(3)減産を除外されている3カ国の生産動向(特にイラン制裁の行方)、(4)投資家マインドを支える米金融緩和の持続性が注目材料になる。
     
  4. 以上を踏まえてWTI先物の年内の見通しを考えると、概ね堅調な展開が予想される。ワクチンの普及が進み、米国などでは経済活動が正常化に向かうと期待されるためだ。財政出動も相まって需要は回復を辿るだろう。ただし、大幅な上昇は見込めない。まず、これまで期待先行的に需要回復を織り込んできたが、ワクチン普及には時間がかかるほか、米国では不需要期に入る。当面は上値が重く、一旦調整するリスクが高い。また、今後は米シェールの緩やかな増産とOPECプラスの減産縮小が見込まれるうえ、年後半には米量的緩和縮小への警戒感が原油価格の重荷になりそうだ。従って、年末にかけて50ドル弱~60ドル強のレンジで、一旦調整を挟んだ後に徐々に持ち直す展開を予想している。不確実性が高い材料が多いだけに、たびたび市場が不安定化する可能性も高い。
■目次

1.トピック: 原油価格はコロナ前を回復
  ・原油価格回復の要因・・・先行きの需給改善期待
  ・今後の注目材料
  ・原油価格の見通し
2.日銀金融政策(1月):「政策点検」の行方に関心集中
  ・(日銀)現状維持
  ・今後の予想
3.金融市場(1月)の振り返りと予測表
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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