求められる米国の追加経済対策-景気回復の持続に追加対策が不可欠も、議会は結論先送りで休会入り。経済への影響を懸念

2020年08月24日

(窪谷 浩) 米国経済

■要旨
 
  1. 新型コロナの感染拡大に伴う経済活動の落ち込みを緩和するため、米議会は3月から4月にかけて累次に亘る経済対策を実施した。政策の目玉は、個人向け支援策では、家計への直接給付や失業保険給付の拡充、中小企業向けには給与保護プログラム(PPP)、州・地方政府向けには補助金支給などである。
     
  2. これらの経済対策の結果、家計の可処分所得は4-6月期に合計4,600億ドル押し上げられたほか、PPPでは中小企業従業員の8割超に相当する51百万人が恩恵を受けたとされる。米経済は4月にかけて戦後最大の落ち込みとなったものの、5月には早くも底打ちしたとみられるが、これらの経済対策が一定程度奏功したと言えよう。
     
  3. もっとも、これらの経済対策の多くが時限措置となっており、期限切れに伴う政策効果の剥落が懸念されている。失業保険の継続受給者数が依然として高水準を維持している中、足元で消費回復ペースも鈍化しており、米景気回復を着実にするためには追加経済対策が不可欠だ。
     
  4. 与野党ともに追加対策の必要性では合意しているものの、州・地方政府に対する補助金支給の扱いなどを巡って対立しており、政策合意には至っていない。また、議会は9月までの夏季休会に入ったため、早期の合意は困難となっている。追加経済対策の速やかな実施は、米景気回復を確実にするために不可欠であり、早期の合意が求められる。
■目次

1.はじめに
2.新型コロナ感染拡大に伴う経済対策
  (新型コロナ対策)
   :個人向けは直接給付、失業保険拡充、企業向けは給与保護プログラム(PPP)などが目玉
  (政策効果):個人向け支援が4-6月期の可処分所得を4,600億ドル押上げ
  (政策効果の剥落懸念):多くの経済対策が時限措置、期限到来に伴う政策効果の剥落が懸念
3.求められる追加経済対策
  (新型コロナの感染再拡大):高水準の新規感染が持続、感染終息の目途は立たず
  (消費回復への懸念):高水準の失業保険継続受給者、消費回復に陰り
  (州政府の歳入不足):20年度~22年度で5,550億ドル不足する見通し
  (与野党の追加政策比較):追加対策の必要性では与野党が一致も、支持する政策に相違
  (今後の見通し):最終的には合意も政策調整は難航を予想

経済研究部   主任研究員

窪谷 浩(くぼたに ひろし)

研究領域:経済

研究・専門分野
米国経済

経歴

【職歴】
 1991年 日本生命保険相互会社入社
 1999年 NLI International Inc.(米国)
 2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
 2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
 2014年10月より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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