感染不安と消費行動のデジタルシフト

第1回 新型コロナによる暮らしの変化に関する調査

2020年08月18日

(久我 尚子) ライフデザイン

■要旨
 
  • コロナ禍の消費行動には感染不安が密接に関係していると考えられるが、感染不安は、男性より女性、30歳代、大学生や小学生、乳幼児の子のいる生活者、専業主婦、在宅勤務のしにくい就業者、デジタル化が進行すると考えている消費者ほど強い。
     
  • 感染不安によるデジタルシフトの影響が大きいであろう買い物の状況を見ると、新型コロナ感染拡大前と比べた現在や収束後の利用状況は、スーパーやデパートなどのリアル店舗の利用は「減少」が、キャッシュレス決済サービスやネットショッピングなどのデジタル手段の利用は「増加」が目立つ。
     
  • 女性や30歳代、専業主婦など、おおむね感染不安の強い層で買い物のデジタルシフト傾向は強い。一方で、子育て・就労世代など、コロナ禍でも動かざるを得ない生活者では、感染不安の強さに対してリアル店舗の利用が必ずしも減少していない。
     
  • 今回の事態によって、オンライン診療など、これまでリアル(対面)のみでの対応と認識されていたサービスまで一気にデジタルシフトした。もはやリアル店舗でしか対応していないといった形は、消費者に選ばれにくくなっているのではないだろうか。
     
  • 一方で、デジタルシフトによって、五感を使った臨場感のある消費機会という消費者にとって失われた価値もある。デジタルシフトへの対応は必須だが、全てがデジタルに成り代わるわけではない。リアル店舗は、消費者に対して、どのような付加価値を提供できるのか、店舗の在り方が一層問われるようになっている。

■目次

1――はじめに
 ~感染不安や非接触志向の高まりで加速する消費行動のデジタルシフト
2――コロナ禍の感染不安
 ~低年齢や大学生の子がいる者、専業主婦、在宅勤務がしにくい就業者で強い
3――コロナ禍の消費行動
 ~感染不安でデジタルシフト、子育て・就労世代などは進みにくい状況も
  1|全体の状況~リアル店舗は減少、キャッシュレス決済やネットショッピングは増加が
    目立ちデジタルシフト
  2|属性別の状況~感染不安が強いほどデジタルシフト、子育て・就労世代や高齢者では
    不安が強くてもデジタルシフトが進みにくい状況も
4――おわりに
 ~デジタル対応は必須だが五感を使う消費機会は減少、今後、問われる店舗の付加価値

生活研究部   上席研究員

久我 尚子(くが なおこ)

研究領域:暮らし

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴

プロフィール
【職歴】
 2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
 2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
 2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
 2021年7月より現職

・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

【加入団体等】
 日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
 生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

レポートについてお問い合わせ
(取材・講演依頼)