コラム

新型コロナウイルス、第三弾の緊急経済対策はどうなるか?

2020年03月16日

(矢嶋 康次)

(鈴木 智也)

1――2020年度予算が成立後、正式に策定される見込みの経済対策規模は、過去最大級か?

3月14日、首相官邸で開いた記者会見で、安倍首相は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、感染拡大防止に力を注いだうえで「機動的に必要かつ十分な経済財政政策を間髪を入れずに講じる」と強調した。3月末に2020年度予算が成立次第、安倍首相は正式にその策定を指示する見込みだ。

まだハードデータは少ないが、足元の景気は広範囲にわたって急速に悪化している。景気ウオッチャー調査(2月分)現状指数は27.4で、前の月から▲14.5pt悪化(消費税率が8%に引き上げられた2014年4月以来の大きな下落幅)、3月1~9日の東海道新幹線の乗客が前年同期比▲56%減と、びっくりするような数字が出始めている。自粛が一気に広がった3月のハードデータが明らかになる4月には、かなり広範囲にわたって経済活動が急速に収縮している姿が明らかになるのではないか。

3月15日、西村経済財政・再生相はテレビ番組に出演し、新型コロナウイルスの拡大が日本経済に与える影響について、「リーマン・ショック並みか、それ以上かもしれない」との認識を示した上で、「インパクトに見合うだけの、それなりの規模のものをやらなくてはいけない」と発言している。

2008年のリーマン・ショックは、生産などが3割以上減少するなど、実体経済に甚大な影響を与えた。その際、2009年4月に麻生内閣が出した経済対策は、事業規模で56.8兆円(真水115.4兆円)に上るものであった[図表1]。安倍第二次政権における最大級の経済対策は、2016年8月「未来への投資を実現する経済対策」であり、事業規模は28.1兆円(真水6.2兆円)であった。今回策定される経済対策も、これらと同程度か、それ以上の規模が視野に入ってくるだろう。
 
1 真水に厳密な定義はないが、実際にGDPの増加に寄与するものとされており、ここでは国費投入部分を指すものとする。

2――どんな対策となってくるのか?消費税に注目が集まる

今回の対策は、感染拡大防止・医療体制強化、危機対応(できるだけ失業、倒産を回避する策)、需要喚起策などが柱となるだろう。

現在、報じられている需要喚起策は、現金給付・クーポン支給策、テレワーク強化、観光業や外食産業を盛り上げるキャンペーン、企業の生産ラインの国内回帰を支援する策などだ。

これだけ国内の消費活動が落ち込んで来ると、新型コロナウイルスが少し落ち着き始めた際には、消費行動を強烈に後押しする策が必要になるだろう[図表2]。現金給付や所得税減税なども検討の俎上にのせられるだろうが、それらは貯蓄に回りがちなため、より積極的に消費者の背中を押す仕組みが必要になってくる。実効性のある経済対策が出てこない限り、投資家の慎重姿勢は変えられず、金融市場も落ち着かない。今後、需要喚起策や生活支援策として、消費税の引き下げが焦点となるだろう。安倍首相は、自民党の一部議員が訴えている消費税の税率引き下げについて、「何をすべきかはこうした提言も踏まえ、さまざまな可能性を想定しながら、経済財政政策を間髪を入れずに講じていきたい」と述べている。今後の議論に注目が集まる。
まもなく策定作業が本格化する第三弾の金融経済対策は、感染拡大を抑止し、国民生活や企業活動を守るため、「先手先手の迅速さ」「十分な規模感」が必要になる。後に振り返って、余分な対策だったと言われることもあり得るが、後手に回って不十分な対策しか打てず、経済に甚大な深刻な影響が出てしまってからでは取り返しがつかない。まさに、今が日本経済にとって正念場であり、政治に果断な意思決定が求められていると言える。
 
 

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