このパネルディスカッションはアップルとフェイスブックのCPO、FTCのコミッショナーにくわえて、世界最大の消費財メーカーP&GのCPOも登壇、モデレーターを含めて5名によるものであった。
テーマは『チーフプライバシーオフィサー・ラウンドテーブル:消費者は何を求めているのか?(Chief Privacy Officer Roundtable: What Do Consumers Want?)』であった。成長するデータ・エコノミーや進化するテクノロジーという状況のもと、企業は消費者の個人データの取得や取扱いにどのように対峙し、消費者のプライバシーを保護する仕組みをどのように構築していくのか。そのような論点について議論がかわされた。
結果的にスピーカーの中心となったのが、アップルとフェイスブックであった。
アップルは、従来「プライバシーは、基本的人権です。」(アップルのコーポレートサイト)として、ティム・クックCEOの方針のもと厳格なプライバシー基準を設けユーザー保護をうたってきた。
パネルディスカッションに登壇したジェーン・ホバースCPOは、アップルのプライバシー保護の方針を「消費者を運転席に置くこと(to put the consumers in the driver’s seat )」と表現した。これは、ユーザーが個人データを自ら管理し、さらには個人データをどのように扱わせるかについて自ら選択するということを意味している。また、「プライバシー・バイ・デザイン(Privacy by Design)」というプライバシー方針に則って、ホバースCPOの部門にはプライバシー・エンジニアとプライバシー・ロイヤーが所属、チームとしてアップルのすべての製品・サービスの開発段階からかかわっていることが説明された。
さらに、ホバースCPOは「データ・ミニマイゼーション」にも言及した。これは、ユーザーから収集する個人データを最小限に抑える、活用する個人データを最小限に抑えるという概念であり、アップルのプライバシー方針のなかで極めて重要な位置をしめるものである。
同CPOは、アップルの音声認識AIアシスタント「Siri」を例にして、データ・ミニマイゼーションの考え方を示した。例えば、ユーザーが「Siri」に天気予報をたずねる場合、アップルはユーザーがいる場所を広域レベルで把握するだけで、より細かい位置情報は収集しない。一方で、ユーザーが近くのレストランを「Siri」にたずねる場合、アップルは最適なレコメンデーションをするために、ユーザーが位置する緯度・経度といったピンポイントのレベルまで探索する。つまり、アップルは、用途に応じて、必要最小限の個人データしか収集しないということである。
3――プライバシー問題の中心に置かれたフェイスブック