(経済見通し)成長率は19年の前年比+2.3%から20年、21年は+1.9%に低下
20年までの経済見通しについては、前回予想(9月)時点からほとんど変更はない。当研究所では、引き続き米経済や金融政策がトランプ大統領の米中をはじめとする通商政策の動向に大きく左右されると考えている。当研究所は今回の見通しでも、通商政策について対中政策は年内に部分合意し、12月15日に予定されている対中関税第4弾は見送り、来年以降は対中関税の段階的な見直しを前提とした。また、安全保障を理由とした輸入自動車に対する25%の追加関税についても実施されないことを前提とした。
この前提の下で、当研究所は個人消費主導の景気拡大が持続し、実質GDP成長率(前年比)は19年に+2.3%、20年に+1.9%と予想する(図表4)。これらの成長率見通しは前回予想(9月)時点から変更はない。
設備投資は、通商政策の不透明感から当面は低調な伸びに留まるものの、対中関税の段階的な見直しに伴い20年の春先以降は回復に向うと予想する。一方、住宅投資は住宅ローン金利の低下もあって20年にかけて回復基調が続こう。
政府支出は、2019年超党派予算法により、20年度と21年度における裁量的経費の歳出上限額が財政拡張的であった19年度の水準に維持されることから、20年にかけてプラスの伸びを維持すると予想する。
外需は、トランプ大統領の通商政策による貿易赤字削減の実効性は低く、20年も成長率のマイナス寄与が持続すると予想する。
物価は、主にエネルギー価格の物価押下げにより、消費者物価の総合指数(前年比)は、19年が+1.8%と18年の+2.4%から低下を見込む。また、20年はエネルギー価格の物価への影響が限定的となることから、+2.2%へ緩やかな上昇に転じよう。
金融政策は、米景気後退が回避されるほか、20年にかけて緩やかなインフレ上昇を見込むことから、当面の追加利下げは想定しておらず、20年にかけて政策金利の据え置きを予想する。もっとも、通商政策で追加関税を多用する保護主義的な通商政策が強まる場合には、米景気の下振れリスクが高まり、追加緩和の可能性は高まろう。
長期金利は、20年末にかけてインフレが小幅に上昇する一方、政策金利が据え置かれることから、足元(1.8%台前半)から上昇を予想するものの、20年を通じて2.0%近辺での推移と上昇幅は限定的に留まろう。
一方、今回追加した21年の経済見通しでは、20年の大統領選挙でトランプ氏が再選され、現行の経済政策が継続することを前提とした。この前提の下で、21年にかけても消費主導の景気回復が持続することを予想する。もっとも、雇用増加ペースの鈍化を背景にした雇用者報酬の伸び鈍化に伴い、個人消費は20年から鈍化が見込まれる。
民間設備投資は、通商政策の不透明感が解消されることで、21年は20年から伸びの加速を予想した。住宅投資は、長期金利の上昇に伴い、21年後半から再びマイナス成長に転じることを見込む。政府支出は22年度も前年度並みの歳出水準が維持されることを前提に、21年末にかけても小幅なプラスを維持すると予想する。最後に、外需は成長押下げが持続しよう。
金融政策は、景気回復が持続するほか、インフレ下振れ懸念の後退もあって、21年には19年に実施した予防的利下げの解除に着手し、年2回の政策金利引き上げを予想する。長期金利も政策金利の引き上げに伴い21年末に2.8%まで上昇しよう。
これらの結果、個人消費の伸び鈍化や政策金利の引き上げなどの成長押下げ要因はあるものの、民間設備投資が回復することもあって、成長率は20年並みの前年比+1.9%を維持すると予想する(図表4)。