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認知症バリアフリーの推進・若年性認知症の人への支援・社会参加支援~4つ目の柱~
4番目の柱では、移動や消費、金融、小売など様々な生活環境を改善することで、認知症の人が暮らしやすい社会を形成する「認知症バリアフリー」の考え方が示されており、2006年制定のバリアフリー新法(高齢者障害者移動等円滑化促進法
13)など既存の法律に基づく取り組みと数値目標に言及したほか、中山間地域における人流・物流を確保するために自動運転移動サービスの実証・社会実装を進めるとした。
さらに、▽誰もが安心して通行できる幅の広い歩道等の整備、▽踏切道に取り残された認知症高齢者の歩行者を救済するため、検知能力の高い障害物検知装置や非常押しボタンの設置、▽高速道路の逆走事故を防ぐため、分岐部の対策、料金所開口部の締切――なども掲げた。
ソフト面では、バス運転手など現場の職員が認知症の人に対応できるような接遇ガイドラインを作成・周知するとともに、事業者による研修充実・適切な接遇の実施を推進するとした。さらに、一定の規模以上の公共交通事業者に対し、認知症の人を含む高齢者などへの対応について、接遇・研修の在り方を含む計画の作成、取り組み状況の報告・公表を義務付けるとしている。交通安全の確保でも、安全運転支援機能を有する自動車を前提として高齢者が運転できる免許制度の創設に向け、2019年度内の方向性を得るとした。
認知症の人が住みやすい社会を形成するため、地域の見守り体制整備や住宅確保の必要性にも触れており、2016年3月改定の住生活基本計画で定めた「高齢者人口に対する高齢者向け住宅の割合4%」など既存施策の数値目標を反映させた。さらに、認知症サポーターなどで構成する支援チームが認知症の人やその家族を支援できるようにする仕組み(チームオレンジ)の構築などに言及しており、チームオレンジを全市町村で整備するという目標を掲げた。
民間企業の取り組みを後押しする観点に立ち、民間企業を認証・表彰する仕組みの創設も盛り込んだ。具体的には、認知症に関する取り組みを実施している民間企業が「認知症バリアフリー宣言」(仮称)を公表し、宣言した企業を認証する仕組みを検討するとしたほか、▽認知症の人の意見を踏まえて開発された商品・サービスの登録システムや開発支援や事例収集、▽食品購入・飲食に不自由しない生活環境の整備に向けた官民連携の取り組み支援と事例の拡大、▽買い物しやすい決済システムの検討、▽成年後見制度で支援を受ける人の財産のうち、日常的な支払いに必要な金銭とは別に通常使わない金銭を特別な預金として預託する「後見制度支援預金」の導入推進、▽高齢者が保有している不動産を担保として生活資金を融資する「リバース・モーゲージ」の普及――などに言及した。
さらに、成年後見人制度の促進も掲げており、2019年5月に策定された「成年後見制度利用促進基本計画に係るKPI」を継承し、2021年度末時点の計画を盛り込んだ。
このほか、認知症に関する様々な民間保険の推進策として、認知症の発症に備える保険の普及に加え、認知症の人が鉄道事故などを起こした場合に備えるため、認知症の人や監督義務者(家族等)を被保険者とする民間の損害賠償責任保険の普及に向けて、各保険会社の取り組みを後押しすると定めた。この関係では、神戸市が認知症の人が起こした事故の費用を補填する民間保険への加入を支援するなど独自の施策を2019年度から本格化させており、こうした事例の収集や政策効果の分析に取り組むとしている。
若年性認知症の人に対する支援としては、相談窓口の設置に加えて、相談支援などを行う若年性認知症支援コーディネーターの配置・強化が規定されたほか、若年性認知症の人の有病率や実態把握、対応策に関する調査研究に取り組む旨も盛り込まれた。
社会参加支援の関係では、認知症の人が支えられる側だけでなく、支える側として役割と生き甲斐を持って生活できる環境づくりが必要とし、地域活動などの重要性にも言及した。
13 元々、建築物を対象とした法律と、交通事業者に対する法律が別々だったが、2006年に統合された。