「目指したい健康」はどんな状態?~アンケートによる「健康」の要素

2016年01月28日

(村松 容子) 医療

1――“健康”とは?

健康であることは、多くの人の願いであり、多くの人が関心を持っていることだろう。

人々の関心の高さを背景に、現在、健康づくりメニューや健康サービスが多数ある。また、昨今では、企業も、健康問題による従業員の生産性低下を防ぐことや公的医療保険の企業負担を抑制することを主な目的として、従業員やその家族の健康を保持・増進することに積極的だ。更に、政府が掲げる日本再興戦略においても「健康寿命の延伸」や「健康産業の活性化」など「健康」に関連した政策が含まれる。ここで使われている「健康」がどういう状態を指すのかは、必ずしも明確に定義されていないが、取組み内容を見る限り、健康診断項目や特定健康診査項目の改善に焦点が当たっているようだ。

しかし、個人にとっての「健康」は、健康診断では計れないものもあるだろう1。たとえば、健康診断の結果が良くても、疲れがちであったとすれば、健康に不安を感じる。したがって、人々が健康を実感しながら暮らすためには、身体的な健康診断項目だけではなく、心理的な要素にも配慮する必要があると考えられる2

それでは、どのような心理的な要素があるのだろうか。本稿では、20~69歳男女個人を対象に(株)ニッセイ基礎研究所で行ったアンケート3から、人々が「目指したい健康」とはどういう状態のことと考えているかについて紹介する。
 
1   WHO(世界保健機関)では、「健康」を「病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること(日本WHO協会訳)」と定義している。
2   2015年12月から企業に導入された「ストレスチェック制度」もこういった動きの1つだろう。
3 「健康に関する調査」2014年9月実施。20~69歳の男女個人(学生を除く)を対象としたインターネット調査。有効回答数3000サンプル。

2――“目指したい健康”はどのような状態か?

1対象者全体では、「病気でないこと」「身体が丈夫なこと」

まず、人々にとって"目指したい健康"とはどういう状態のことか、「その他」を含む21項目をあげてイメージに近いものを複数回答で尋ねた(図表1)。

その結果、対象者全体では、「病気でないこと」が73.8%ともっとも高く、「身体が丈夫なこと」が58.1%で続いた。以下は半数には満たないが、「美味しく飲食できること」「ぐっすり眠れること」「心が平和で穏やかなこと」が40%前後で続き、低い項目では「他人から認められること」が6.7%、「その他」が0.2%となった。
2"目指したい健康"はいくつかのグループに分けられる

(1)グループの特徴
続いて、上記項目の選択パターンに基づいて、対象者を6つのグループに分類した。分類には、「その他」を除く20項目を使用し、潜在クラス分析4を使った。

分類したグループ別に、"目指したい健康"として各項目を選択した割合を示したものが図表2である。以下、6つのグループを図表2の順にグループIからグループⅥと呼ぶことにする。

グループIとグループVIは、対象者全体と比べて全般的に低いが、それぞれ「病気がない」、「毎日が楽しく喜びにあふれている」のみが対象者全体と比べて高い点が特徴的である。グループIではその他「身体が丈夫」「長生きできる」も対象者全体には及ばないがやや高くなっており、身体面を重視しているのに対し、グループVIは、心理面を重視している。

グループIIIとグループVは、対象者全体と比べるといずれも高い。グループVでは最も低い「他人から認められる」でも半数を超えており、"目指したい健康"への期待は多岐にわたる。ただし「長生きできる」については、この2つのグループは他項目と比べると相対的に低くなっている。
また、グループIIは、対象者全体と似た傾向をもつが、「幸せを感じる」「家庭円満である」など心理面を重視する傾向があった。グループIVは「病気がない」「身体が丈夫」「体が軽くて軽快に動ける」など、身体的な充実を重視していた。

なお、グループ別構成比は、対象者全体では、グループIから順に35.9%、24.9%、17.2%、11.0%、7.4%、3.5%だった。
 
4   対象者を、その特徴に基づいてグループに分ける統計手法の1つ。マーケティングなどでよく利用される。今回は、情報量規準(BIC)の変化を参考にクラス数を6とした。
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