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探索的空間解析でみる日本人旅行客の「ホットスポット」とその特色~旅行需要の集積が認められた自治体の数は、全国で「105」~

2025年08月27日

(吉田 資) 不動産市場・不動産市況

3.おわりに

本稿では、探索的空間解析の手法を用いて、コロナ禍以降の日本人国内旅行者の動向を分析し、旅行需要が旺盛な自治体(「ホットスポット」)を検出し、その特色や経年変化を確認した。

分析の結果、2024年時点の「ホットスポット」は20都道府県にわたり、日本各地に多様で豊富な観光資源が存在していることを確認した。自然景観や名所・旧跡といった定番の観光スポットに加え、「道の駅」や「映えスポット」、「聖地巡礼」等のコンテンツツーリズムも有力な観光資源となり、旅行客の増加に寄与しているようだ。

また、旅行客の増加を近隣自治体にも波及させて、旅行客の回遊・周遊を促進するためには、2次交通の整備や、高速道路など移動環境の改善が不可欠であると示唆された。

上記の環境整備は、単一の自治体で対応することが難しい。そのため、観光圏制度20や日本版 DMO21の設立推進等を通じて、必要な行政サービス等を近隣の自治体間で補い合う「広域連携」の取り組みが進められている。

こうした「広域連携」による観光振興は国内旅行者の増加を後押しし、新たなホットスポットの出現につながることが想定される。不動産事業者や不動産投資家は、旅行客の動向や自治体などの観光施策を踏まえた戦略的な事業判断が求められることになりそうだ。
 
20 地域(自治体)間の連携により地域の幅広い観光資源を活用して、観光客が滞在・周遊できる魅力ある観光地域づくりを促進することを目的とする制度。
21 「観光地域づくり法人」を意味し、地域全体の観光戦略を策定し、実行する組織。複数の都道府県に跨る「広域連携 DMO」、複数の地方自治体に跨る「地域連携 DMO」、単独の地方自治体内の「地域 DMO」がある。

 

金融研究部   上席研究員

吉田 資(よしだ たすく)

研究領域:不動産

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

経歴

【職歴】
 2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
 2018年 ニッセイ基礎研究所
 2025年7月より現職

【加入団体等】
 一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)

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