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ユーロ圏GDP(2025年4-6月期)-前期比プラス成長を維持

2025年07月31日

(高山 武士) 欧州経済

1.結果の概要:前期比0.1%とプラス成長を維持

7月30日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏GDPの一次速報値(Preliminary Flash Estimate)を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【ユーロ圏20か国GDP(2025年4-6月期、季節調整値)】
前期比は0.1%、市場予想1(0.0%)を上回り、前期(0.6%)から低下した(図表1)
前年同期比は1.4%、市場予想(1.2%)を上回り、前期(1.5%)から低下した(図表2)

 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想も同様

2.結果の詳細:関税引き上げの駆け込みは一部剥落したと見られるが、プラス成長維持

ユーロ圏の25年4-6月期の成長率は前期比0.1%(年率換算0.4%)となった。トランプ関税引き上げ前の駆け込み生産・輸出による押し上げ効果が生じていた1-3月期(前期比0.6%、年率2.3%)からは大幅に減速したが、プラスの伸び率は維持した。実質GDPの水準はエネルギー価格が高騰した22年の夏(22年7-9月期)対比では2.2%となった。

経済規模の大きい4か国の伸び率を見ると、前期比ではドイツ▲0.1%(1-3月期0.3%)、フランス0.1%(同0.3%)、イタリア▲0.1%(同0.3%)、スペイン0.7%(同0.6%)となった(図表3横軸)。ドイツ・イタリアは前期比マイナス成長となったが、1-3月期に駆け込み輸出が生じており、その剥落と見られる。また、1-3月期に高成長を記録したアイルランドも前期比のマイナス幅が大きかった(4-6月期▲1.0%、前期7.4%)。前期比伸び率について、ドイツ統計局は家計・政府消費はプラス成長だったが設備投資・建設投資がマイナス成長となったと指摘、イタリア統計局は供給面では農林水産と工業がマイナス成長、サービス業は横ばいで、需要面では内需の寄与がプラスとなる一方で純輸出の寄与がマイナスだったと指摘している(フランス・スペインは後述)。エネルギー危機対比での実質GDPの水準はフィンランド、ドイツ、オーストリア、エストニアがマイナス圏にある(図表4)。
次にフランスとスペインは各国統計局(フランス国立統計経済研究所(INSEE)、スペイン統計局(INE))がGDPの詳細を公表しているので、以下で確認する。

フランスの成長率(前期比)を需要項目別に見ると、個人消費0.1%(前期▲0.2%)、政府消費0.2%(前期0.2%)、投資▲0.3%(前期▲0.1%)、輸出0.2%(前期▲1.1%)、輸入0.8%(前期0.3%)となった(図表5)。在庫変動の前期比寄与度は0.5%ポイント(前回0.7%ポイント)、純輸出の前期比寄与度は▲0.2%ポイント(前回▲0.5%ポイント)であり、前期に引き続き主に在庫の積み増しが成長率を押し上げており、消費や投資、輸出といった主要項目は伸び悩んでいる。産業別の付加価値伸び率は、第一次産業が3.6%(前期3.6%)、工業が▲0.7%(前期▲0.4%)、建設業が0.2%(前期▲0.3%)、市場型サービス産業が0.6%(前期0.2%)、非市場型サービスが0.0%(前期0.1%)だった。
スペインの成長率(前期比)を需要項目別に見ると、個人消費0.7%(前期0.6%)、政府消費▲0.1%(前期▲0.5%)、投資1.6%(前期1.9%)、輸出1.1%(前期1.7%)、輸入1.7%(前期1.5%)となり、主要内需(個人消費、投資)や輸出が高い伸びを維持している(図表6)。産業別には、農林水産業が▲9.5%(前期8.3%)、工業が0.8%(前期1.1%)、建設業が1.5%(前期0.5%)、サービス業が1.2%(前期0.2%)となり、農林水産業を除く産業は高成長を記録した。

経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

 ・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
  アドバイザー(2024年4月~)

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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