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マスク着用のコミュニケーションへの影響(2)-コロナ禍の研究を経て分かっていること/いないこと

2025年06月26日

(岩﨑 敬子) 保険会社経営

■要旨

マスク着用が人々に与える影響に関する研究分野は、コロナ禍でのその研究の需要の高まりを受けて、近年急速に進展した。マスク着用の影響は、感染拡大予防効果のような医学的側面から、コミュニケーションの質など社会心理的側面まで多岐にわたる。コロナ禍を経た研究蓄積をもとに、そのメリットやデメリットを多面的に捉えることは、マスクとのより良い付き合い方を考える機会となるかもしれない。そこで本稿を含めて、全5回の基礎研レポート/基礎研レターでは、マスク着用の人々への影響について、「健康」「メンタルヘルス(1・2)」「コミュニケーション(1・2)」に分けて、コロナ禍を経た研究蓄積からわかっていること/いないことを紹介する。
 
前項では、コミュニケーションへの影響として、個人識別や感情認識、音声認識を難しくさせる影響を紹介したが、本稿では、より幅広い意味でのコミュニケーションへの影響として、マスク着用の周りの人々の感情への影響や、着用者に対する印象への影響について、これまでの研究で示されてきたことを紹介する。要旨を先取りしてお伝えすると、マスク着用は対面者の表情模倣や共感を妨げる可能性が示唆される研究結果はあるものの、実社会でもそうした傾向が見られるのかどうかはまだ分かっていない。また、着用者の印象については正負様々な結果が報告されており、コロナ禍でのマスク着用に対する社会規範の変化等様々な要因によってその影響が変化する可能性が示唆される。

■目次

1――マスク着用の周りの人々の感情への影響:表情模倣や共感を妨げる可能性
  1|マスク着用と周りの人々の感情の関係についての理論
  2|マスク着用の表情模倣への影響についての研究
  3|マスク着用の共感への影響についての研究
2――マスクの着用者の印象への影響:魅力、信頼感、親近感に影響がある可能性
  1|マスク着用の顔の魅力への影響
  2|マスク着用の信頼感への影響
  3|マスク着用の親近感への影響
3――おわりに

保険研究部   准主任研究員

岩﨑 敬子(いわさき けいこ)

研究領域:保険

研究・専門分野
応用ミクロ計量経済学・行動経済学 

経歴

【職歴】
 2010年 株式会社 三井住友銀行
 2015年 独立行政法人日本学術振興会 特別研究員
 2018年 ニッセイ基礎研究所 研究員
 2021年7月より現職

【加入団体等】
 日本経済学会、行動経済学会、人間の安全保障学会
 博士(国際貢献、東京大学)
 2022年 東北学院大学非常勤講師
 2020年 茨城大学非常勤講師

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