職域における金融経済教育の進展に向けて-人的資本経営における戦略的意義と普及に向けた提言

2025年06月12日

(西久保 瑛浩) 消費者行動

■要旨

現在、家庭や学校教育に加えて、職域の金融経済教育チャネルとしての可能性が注目されている。

職域は労働者が日常的に属する場であり、特定のライフステージにおいて実務的かつタイムリーな金融教育を提供することができるという点で、高い教育効果が期待される。

さらに近年では、従業員のファイナンシャル・ウェルビーイングの向上を通じた労働生産性等の向上という、「人的資本経営」上の戦略的意義も見出されている。

そこで本稿では、職域における金融経済教育の現状とその有効性、さらには今後の展開ついて論じる。
 
【要点】
  • 職域における金融経済教育の現状として、学校・勤務先等で金融教育を行けた人の割合は1割未満で横ばい。若年層ではやや上向きな傾向がみられる。
     
  • 教育を受けた場所では、「職場」が4割を超え最も高く、特に現役の常勤雇用者を中心に一定普及の兆候がみられる。
     
  • 職域における金融経済教育の効果には、従業員が享受する「従業員効果」と企業が人的資本を通じて得られる「経営効果」に大別できる。
     
  • 金融経済教育の行動変化に対する影響は、教育と金融行動との時間的密接性の高さ関係しているとみられ、その点で職域は効果的なチャネルと考えられる。
     
  • 今後の進展に向けては、上記2つの効果を軸とした4段階(検証⇒理解⇒発現⇒拡大)のロードマップが示される。


■目次

1――はじめに
2――職域における金融経済教育の現状
3――職域における金融経済教育の効果
4――職域における金融経済教育の進展に向けて
5――おわりに
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