Well-being時代の飲酒行動-20代の6割が「ほぼノンアル」、飲み方にも多様性

2025年05月27日

(久我 尚子) ライフデザイン

■要旨
 
  • 国内のアルコール販売(消費)数量は1996年をピークに減少傾向が続いており、コロナ禍による落ち込みを経て、直近ではやや回復の兆しが見られる。消費の内訳では、1990年代半ばまではビールが7割を超えていたが、最近ではリキュール系飲料の伸びも目立ち多様化している。「とりあえずビール!」で始まる飲み会文化は影を潜め、現在ではそれぞれが好みに応じて飲み物を選ぶスタイルが主流になりつつある。
     
  • 飲酒習慣率は、20年ほど前と比べて男性は全年代、女性は20~30歳代と70歳以上で低下しており、特に男性40~50歳代の低下幅が大きい。この背景には、景気低迷による会食機会の減少、健康志向の高まりなどがあげられる。一方、働く女性が増えたことなどを背景に女性の40~60歳代の飲酒習慣率はやや上昇している。
     
  • 飲酒の頻度を見ると、2023年ではアルコールを飲めないわけではないものの、「ほとんど飲まない」「やめた」(ソバ―キュリアスと見られる)層は若いほど多く、20歳代の約2割を占める。これに「飲まない(飲めない)」と回答した層も含めると、20歳代の約6割が、日常的にアルコールをほとんど摂取しない「ノンアル生活」を送っている。
     
  • 若者のアルコール離れの理由にはリスク回避志向の高まりや娯楽の多様化などがあげられる。若者は将来不安や不確実性などから慎重な消費態度を示す傾向が強い。また、ネットやスマホの普及でゲーム、SNS、動画配信などの手軽で多様な娯楽が身近にある。SNSを通じて常に他者とつながっているため、リアルに集まって飲む欲求も低下する中、若者にとって「飲酒はコスパの悪い娯楽」とみなされつつあるのだろう。
     
  • かつては「飲みにケーション」という言葉が象徴するように、就業後の飲み会が職場の人間関係を築く場とされてきた。しかし、働き手の多様化や働き方改革が進み、健康意識も高まる中で、その役割は変化しつつある。アルコールの楽しみ方そのものが多様化し、「飲まない選択」も含めて尊重される時代になってきた。多様な価値観を受け入れていくことは、サステナビリティを重視する現代社会の流れにも合致している。


■目次

1――はじめに~広がる「ソバ―キュリアス」、ノンアル生活を後押しする動きも?
2――酒類消費量の変化~「とりあえずビール!」の衰退と多様化する飲酒スタイル
3――飲酒習慣率の変化~全世代で減少する男性、20歳代男性を超えた40~60歳代女性
4――飲酒頻度の変化~20歳代の6割がほぼノンアル、飲酒は「コスパの悪い娯楽」?
5――ウェルビーイング時代の「飲み方の選択」~飲む・飲まない、どちらも自然な選択肢に

生活研究部   上席研究員

久我 尚子(くが なおこ)

研究領域:暮らし

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴

プロフィール
【職歴】
 2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
 2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
 2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
 2021年7月より現職

・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

【加入団体等】
 日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
 生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

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