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特定大規模乗合保険募集人制度導入等に係る保険業法改正

2025年05月23日

(松澤 登) 保険会社経営

■要旨

保険業法の改正案が2025年通常国会に付議されている。これは損害保険業界における代理店の不祥事等を受けて設置された金融審議会のワーキンググループが策定・公表した報告書に基づいて上程された改正案であるが、生命保険募集人に関しても同様に適用される予定である。
 
いくつか改定項目があるが、まず兼業特定保険募集人制度の導入である。兼業特定保険募集人は、いわゆる保険代理店(=生命保険募集人以外にあっては従業員たる保険募集人を含まないもの)であって、保険金支払いに影響を及ぼす兼業を行っているものにかかる規制である。兼業特定保険募集人に関しては、その顧客について利益相反が生じないよう保険会社が管理するものとされた。
 
次に、特定大規模乗合保険募集人は、現行存在する大規模乗合保険募集人のうち、内閣府令で定められる基準を上回る特に大規模なものと定義されている。特定大規模乗合保険募集人は法令遵守責任者の配置、苦情処理に対する体制整備等が求められる。

また、兼業特定保険募集人たる特定大規模乗合保険募集人は、兼業業務が保険金支払等に影響しないよう必要な措置を取ることとされている。
 
さらに保険会社等の特別な利益提供規制に関して、保険契約者である企業のグループ会社への利益提供も該当するとしている。この結果、保険契約者のグループ会社である保険代理店に出向などであって、社会通念上相当性を欠くようなものは禁止されることとなる。
 
最後に、乗合代理店における比較推奨販売にあたって顧客意向に沿って保険商品を絞り込み、意向にそって保険商品を選別・推奨すべきことが求められる。
 
なお、あわせて保険仲立人の手数料を顧客に請求できるようにするなどの改正などが予定されている。

■目次

1――はじめに
2――保険会社の体制整備
  1|顧客の利益の保護のための体制整備(改正法100条の2の2)
  2|兼業特定保険募集人とは
  3|利益相反管理措置とは
3――特定大規模乗合保険募集人の業務運営に関する措置(改正法294条の4)
  1|特定大規模乗合損害保険代理店とは
  2|特定大規模乗合保険募集人の体制整備義務
  3|兼業特定保険募集人である特定大規模乗合保険募集人の体制整備義務
  4|特定大規模乗合保険募集人のその他の体制整備義務
4――保険会社による保険契約者等への過度な便宜供与の禁止(改正法300条1項5号・8号)
  1|特別の利益提供の禁止(その1―保険会社等によるもの)
  2|特別の利益提供の禁止(その2-保険会社の特定関係者によるもの)
  3|特別の利益提供の禁止(その3-潜脱行為等)
5――比較推奨販売・保険仲立人
  1|乗合代理店における適切な比較推奨販売の確保
  2|保険仲立人の活用促進
6――企業内代理店
  1|企業内代理店の実態
  2|企業内代理店の特定契約比率規制の見直し
  3|企業内代理店の特定契約比率規制からの除外
7――火災保険の赤字解消
8――おわりにかえて

保険研究部   取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長

松澤 登(まつざわ のぼる)

研究領域:保険

研究・専門分野
保険業法・保険法|企業法務

経歴

【職歴】
 1985年 日本生命保険相互会社入社
 2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
 2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
 2018年4月 取締役保険研究部研究理事
 2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
 2025年4月より現職

【加入団体等】
 東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
 東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
 大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
 金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
 日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等

【著書】
 『はじめて学ぶ少額短期保険』
  出版社:保険毎日新聞社
  発行年月:2024年02月

 『Q&Aで読み解く保険業法』
  出版社:保険毎日新聞社
  発行年月:2022年07月

 『はじめて学ぶ生命保険』
  出版社:保険毎日新聞社
  発行年月:2021年05月

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