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【アジア・新興国】韓国の生命保険市場の現状-2023年のデータを中心に-

2025年05月22日

(金 明中) 社会保障全般・財源

4――営業組織と保険外交員

(1)生命保険会社の営業組織
生命保険会社の営業組織は、主に管理店舗と募集店舗に区分される。管理店舗とは、募集店舗の管理および本社から委任された業務とその他の業務を統括する本部および支店を指す。一方、募集店舗は管理店舗の下部組織として、募集、集金、その他の販売サービス活動を行う営業所を意味する。GAチャネルやオンラインチャネルの普及に伴い、2012年以降、管理店舗および募集店舗の数は継続的に減少している。2023年末時点の生命保険会社全体の総店舗数は1,843店舗となっている(図表6)。
(2)保険代理店の動向
保険代理店制度は1983年に導入され、生命保険会社と代理店契約を締結した組織が保険契約の締結や告知の受領などの業務を行っている。2004年以降、この制度は生命保険、損害保険、第三分野保険に区分されて運営されている。生命保険代理店は2005年度に個人代理店数が急増した結果1万店を超えたものの、その後は減少傾向に転じ、2023年度末現在では6,106店まで減少している。

一方、バンカシュランス制度が2003年8月に導入され、2023年末時点で20社がバンカシュランスに参加しており、金融機関保険代理店の数は1,848件に達している。
 
(3)保険外交員の現状
2023年度末現在の保険外交員の数は77,482人で、前年比1.8%(1,410人)減少した。1996年3月末の349,206人をピークに、1997年のアジア通貨危機以降、保険営業組織の再編や金融機関保険代理店の活性化により、保険外交員の数は減少傾向が続いている。

保険外交員の性別構成比を見ると、女性が78.9%で男性の21.1%を大きく上回っている。また、勤続年数別構成比では、5年以上の勤続者が全体の40.6%を占めており、年齢別では、50代が最も多く、全体の39.6%を占めている。

5――生命保険業界と公的年金の最近の動向

5――生命保険業界と公的年金の最近の動向

(1)AIAプレミアパートナーズが生命保険協会に準会員として加入(2024年4月18日)
 AIA生命の販売専門子会社であるAIAプレミアパートナーズが生命保険協会に準会員として加入した。
 
(2)DGB生命、iMライフに社名を変更(2024年6月5日)
親会社である大邱銀行が社名を「iMバンク」に変更したことを受け、DGB生命も社名を「iMライフ」に変更した。
 
(3)保険詐欺防止特別法改正(2024年8月14日)
保険詐欺防止特別法施行令改正案が2024年8月14日から施行された。保険詐欺防止特別法が改正されたのは2016年の制定から8年ぶりのことである。この法律は、保険詐欺の斡旋・広告行為の処罰と金融当局の調査権限強化を柱としている。今後、保険詐欺の斡旋・誘引・勧誘または広告行為が禁止され、これに違反した場合、10年以下の懲役または5000万円以下の罰金に処せられる可能性がある。
 
(4)病院級以上の医療機関、実費保険請求の電子化を施行(2024年10月25日)
2024年10月25日から、病院級医療機関(病床30床以上)と保健所を対象に、実費保険請求の電子化が施行された。
 
(5)韓国・インドネシア生命保険協会業務提携協定の締結(2024年12月10日)
韓国とインドネシア生命保険協会が業務提携協定(MOU)を締結した。今回の協定により、両協会は、生命保険統計の定期的な交換、教育・研修プログラムの協力、インドネシア国民を対象とした教育資料の共同制作など、多様な分野での協力を合意した。
(6)18年ぶり国民年金法改正案が可決(2025年3月20日)
韓国国会は2025年3月20日の本会議で、国民年金法改正案を可決した。改正案の主な内容は次の通りである。

・保険料率と所得代替率の引き上げ
保険料率を現在の9%から13%に引き上げる(2026年から毎年0.5%ポイントずつ段階的に引き上げ、2033年には13%まで引き上げ)。保険料率は1988年の国民年金制度導入当時3%だったが、1993年に6%、1998年に9%に調整された後、現在まで維持されてきた。一方、所得代替率を2026年から43%に引き上げる。所得代替率は、年金を受け取り始める時点における年金額が、現役世代の手取り収入額と比較してどのくらいの割合かを示す指標だ。国民年金導入当初の所得代替率は70%であったが、1999年に60%、2008年に50%に引き下げられた。その後も毎年0.5%ずつ引き下げられており、2028年までに40%に調整される予定だった。2025年の所得代替率は41.5%であり、来年は41%に調整される予定だったが、今回の法律改正により、来年からの所得代替率は43%に固定される。

・支給保証の明文化
国民年金制度に対する国民の信頼を向上させるため、国家の年金給付支給根拠を明確に規定した。現行の国民年金法は、年金給付が安定的・持続的に支給されるよう必要な施策を策定する国家の義務を規定しているが、今後は「国家が年金給付の支給を保証し、これに必要な施策を策定・実施する」ように改正することで、年金制度に対する国民の信頼を高めることを期待している。

・出産クレジットの拡大
現在第2子から適用されている出産クレジットが第1子からに拡大される。出産クレジット制度は、2008年1月1日以降に生まれた第2子以降の子供の数に応じて、最大50ヵ月まで国民年金加入期間を追加で認める制度だ。現在は、第2子から12ヵ月、第3子以上からは18ヵ月ずつ追加し、計50ヵ月の上限があるが、今後は上限が廃止されることになった。

・軍服務クレジットの拡大
軍務クレジットの認定期間も、現在の6ヵ月から最大12ヵ月まで拡大する。
 
・低所得の地域加入者まで保険料支援を拡大
保険料の引き上げに伴う低所得の地域加入者(自営業者など職場加入者ではない者)の負担を軽減するため、保険料支援の対象も拡大する。従来は、国民年金の地域加入者のうち、事業中断・失業・休職などの理由で保険料納付が免除された者を対象に1ヵ月の保険料の50%を最大12ヵ月まで支援していたが、支援対象を低所得の地域加入者まで拡大した。

参考文献
 
日本語  
韓国語
  • 韓国生命保険協会(2024)「生命保険利用実態調査」
  • 生命保険協会『2024生命保険Factbook』

生活研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

金 明中(きむ みょんじゅん)

研究領域:社会保障制度

研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計

経歴

プロフィール
【職歴】
独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職

・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
・2021年~ 専修大学非常勤講師
・2021年~ 日本大学非常勤講師
・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
・2024年~ 関東学院大学非常勤講師

・2019年  労働政策研究会議準備委員会準備委員
       東アジア経済経営学会理事
・2021年  第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員

【加入団体等】
・日本経済学会
・日本労務学会
・社会政策学会
・日本労使関係研究協会
・東アジア経済経営学会
・現代韓国朝鮮学会
・韓国人事管理学会
・博士(慶應義塾大学、商学)

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