3|DFPとAdxの連携
抱き合わせ販売の問題は、ある市場における経済力を利用して、別の市場における競争を制限することにある。抱き合わせ販売はその行為を行ったこと自体でシャーマン法1条(取引制限
6)の当然違法行為(illegal per se=その行為がどの程度悪影響を及ぼしたかを問題とせず、行為自体が違法)となる。
抱き合わせ販売は以下の4要素を立証しなければならない。
i)2つの異なった製品の存在
ii)抱き合わせ製品(tying product)の購入にあたり、抱き合わされた製品(tied product)の購入を条件づける合意(若しくは、少なくとも抱き合わされた製品を他から購入しない合意)
iii)販売者が抱き合わせ製品市場(tying product market)において、抱き合わされた製品市場(tied product market)における競争を制約する程度の十分な経済力を有すること
iv)州際通商に少なからぬ影響を及ぼすこと
原告は、Googleが、DFPをAdxに抱き合わせたと主張する。具体的には、媒体社がDFP(=抱き合わされた製品)を利用しない限り、Adx(抱き合わせ製品)からリアルタイム入札を受けることを禁止するGoogleの技術的およびポリシー的な制限を挙げている。
原告は上記4要素を以下の通り証明した。
i)媒体社アドサーバーと広告取引所とは2つの別個の製品であり、合理的な互換性(reasonably interchangeable)はない(=同一市場の製品ではない)。
ii)GoogleがAdx利用にあたって課した制限は、抱き合わせ製品(Adx)の購入を抱き合わされた製品(DFP)の購入を条件としている。媒体社にとって、AdWordsへの効果的なリアルタイムのアクセスを実現するには、抱き合わせ製品(Adx)と抱き合わされた製品(DFP)の両方の購入が唯一の選択肢であった。
iii)裁判所は、Googleが抱き合わせ製品市場であるOD広告取引所市場において、独占力を有し、抱き合わされた製品市場での競争を制限するのに十分な経済力を有していると判断した。Adxは超競争的な手数料を設定し、次に大きなOD広告取引所の9倍の規模を有し、参入と拡大に対する高い障壁によって保護されている。Adxの独占力の源泉はAdWordsの持つ他に類を見ない大規模かつ多様な広告需要である。
iv)AdxとDFPの連携は「州際通商に少なからぬ影響」を及ぼしている。AdxとDFPは米国内および世界中の媒体社によって利用されている。
4要素が立証されたため、シャーマン法1条違反が認定された。また、この抱き合わせは、一方的に課されたものであるが、独占力の維持または構築に著しく寄与するために、シャーマン法2条(私的独占
7)にも違反する。
DFPは最高の広告サーバーではなかったが、GoogleはAdx-DFPの提携と関連する活動を通じて広告サーバー市場における競争を破壊したため、ほとんどの他の広告主アドサーバーは廃業又は売却された。
6 シャーマン法1条では「各州間の又は外国との取引又は通商を制限する全ての契約、トラストその他の形態による結合又は共謀」は、禁止されるとする。
7 シャーマン法2条では、「各州間の又は外国との取引又は通商のいかなる部分を独占化し、独占を企図し、又は独占する目的をもって他の者と結合・共謀する」ことが禁止されている。