3|問診項目とその解釈
5歳児健康診査マニュアルによると
*3、問診票の「精神・神経発達」などの項目では、しりとりを3往復以上できる標準発達を基準に、知的能力やルールの理解、対人コミュニケーション能力について確認を実施する
*4。知的能力に限らず、質問が聞き取れない場合、難聴の可能性を疑うことや
*5、その他の所見と合わせて自閉症スペクトラム障害も視野に入れて評価している。
「情緒・行動に関する設問」では、癇癪度合いや集中力などの状況を確認することで、衝動性や不注意な行動特性が日常生活にどれほど影響を与えているかを評価し、行動特性が酷い場合には、心理発達相談などの専門職への相談や児童精神科への診察へつなぐ必要もある。
「メディアの視聴や睡眠に関する設問」では、テレビやスマホの視聴時間や入眠前の視聴有無、睡眠への影響について確認し、家族を含めたメディアリテラシーについて評価を実施している。幼児期のテレビの視聴は、時間が長いほど7歳時点でのADHD(注意欠如・多動性障害)に関連する問題が多いことや
*6、幼児や低年齢の子どもほど影響を受けやすい事が知られており
*7、重要な確認項目である。「親や子育ての状況」では、子どもの特性による育てにくさや、育児協力者の有無、子育てサービスの利用状況などを確認し、必要時適切なサポートにつなげる必要がある。また、「子どもが大人同士の喧嘩を見る機会がある」などの項目は、児童虐待防止法における心理的虐待の一種である「面前DV」に該当する。東京都目黒区では
*8、面前DVに関する子どもへの影響などもHP上に公開しており、憂慮すべき重要な項目として位置づけている。2020年三重県の調査では
*8、9割近くが「面前DV」という言葉を知らない実態が示されているため、5歳児健診では、日頃の子どもへの養育態度を振り返る機会に加えて、どの様な対応が児童虐待に該当するのかを知る重要な機会ともなる。
*3 令和3年度~5年度 子ども家庭科学研究費補助金「5歳児健診マニュアル」
*4 ルールを教えると理解できる場合有
*5 耳垢塞栓症で回答不可の場合もあり、知的能力に限らず多角的評価が必要。
*6 Christakis, D.A. ,Zimmerman. ,DiGiuseppe. D.L., & McCarty, C.A. (2004). Eary television exposure and subsequent attentional problems in children, Pediatrics,113,708-713.
*7 平成28年度 文部科学省委託調査 「青少年を取り巻くメディアと意識・行動に関する調査研究」
*8 目黒区HP「子どもの前での夫婦げんか(面前DV)」
*9 三重県子ども・福祉部子育て支援課「配偶者等からの暴力に関するアンケート」の実施結果報告