米個人所得・消費支出(25年2月)-個人消費(前月比)が市場予想を下回る一方、コアPCE価格指数(前月比)は市場予想を上回る

2025年03月31日

(窪谷 浩) 米国経済

1.結果の概要:個人所得は市場予想を上回った一方、個人消費は市場予想を下回る

3月28日、米商務省の経済分析局(BEA)は2月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.8%(前月改定値:+0.7%)と+0.9%から下方修正された前月、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.4%を上回った(図表1)。個人消費支出は前月比+0.4%(前月改定値:▲0.3%)と▲0.2%から小幅下方修正された前月からプラスに転じた一方、市場予想の+0.5%は下回った。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は+0.1%(前月改定値:▲0.6%)と▲0.5%から小幅下方修正された前月からプラスに転じた一方、市場予想の+0.3%を下回った(図表5)。貯蓄率1は4.6%(前月:4.3%)と前月から+0.3%ポイント上昇した。

価格指数は、総合指数が前月比+0.3%(前月:+0.3%)と前月、市場予想(+0.3%)に一致した。変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は前月比+0.4%(前月:+0.3%)とこちらは前月、市場予想(+0.3%)を上回った(図表6)。前年同月比は総合指数が+2.5%(前月:+2.5%)と前月、市場予想(+2.5%)に一致した。コア指数は+2.8%(前月改定値:+2.7%)と+2.6%から小幅上方修正された前月、市場予想(+2.7%)を上回った(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:個人消費が下振れる一方、インフレ率は上ぶれ

個人所得(前月比)は1月が+0.8%と前月の+0.7%に次いで高い伸びとなった(図表1)。後述するように特殊要因で移転所得が+2.2%の高い伸びとなったほか、賃金・給与も堅調な伸びが続いている。これらの結果、可処分所得(前月比)も+0.9%と24年1月以来の高い伸びとなった。

これに対して、個人消費(前月比)は前月からプラスに転じたものの、市場予想を下回る伸びに留まった。財消費は前月に落ち込んだ反動もあって堅調な伸びとなったものの、サービス消費の伸びが鈍化したことが大きい。個人消費の伸びが可処分所得の伸びを下回った結果、貯蓄率は4.6%と24年6月以来の水準に上昇した。

一方、FRBが物価指標としているPCE価格指数は前月比で総合指数が前月並みの伸びとなったほか、物価の基調を示すコア指数は3ヵ月連続で上昇した。また、前年同月比では総合指数が前月から横這いとなった一方、コア指数は前月から増加し物価上昇圧力が燻っていることを示した。このため、2月の結果は個人消費の下振れリスクとインフレの上振れリスクを示しており、FRBは景気とインフレを睨んで難しい舵取りを迫られよう。

3.所得動向:移転所得が大幅に増加

2月の個人所得(前月比)は大幅な伸びとなったが、移転所得が+2.2%(前月:+1.8%)となったことが大きい(図表2)。これは主に2月にマーケットプレイスを通じて購入した健康保険料に対する税額控除に伴うものである。また、賃金・給与も+0.4%(前月:+0.2%)と堅調な伸びを維持したほか、自営業者所得が+0.1%(前月:▲0.2%)と前月からプラスに転じた。一方、利息配当収入が+0.4%(前月:+1.2%)と高い伸びとなった前月からは伸びが鈍化した。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、2月の名目が+0.9%(前月:+0.7%)と前月から伸びが加速した(図表3)。価格変動の影響を除いた実質ベース(前月比)も+0.5%(前月:+0.3%)と前月から伸びが加速した。

4.消費動向:自動車・自動車部品が回復

2月の名目個人消費(前月比)は、財消費が+0.9%(前月:▲1.7%)と前月からプラスに転じた一方、サービス消費が+0.2%(前月:+0.4%)と前月から伸びが鈍化した(図表4)。

財消費は、耐久財が+1.4%(前月:▲4.3%)、非耐久財が+0.6%(前月:▲0.2%)と耐久財、非耐久財消費ともに前月からプラスに転じた。

耐久財では、自動車・自動車部品が+1.7%(前月:▲8.1%)、娯楽財・スポーツカーが+1.5%(前月:▲2.5%)、家具・家電が+1.0%(前月:▲1.9%)といずれも前月からプラスに転じた。とくに、1月に南部と中西部を襲った暴風雪の影響を受けて大幅な押し込みとなった自動車・自動車部品がプラスに転じて耐久財消費全体を押し上げた。

非耐久財ではガソリン・エネルギーが▲1.4%(前月:+2.7%)と前月からマイナスに転じたものの、衣料・靴が+0.3%(前月:▲1.0%)、食料・飲料が+0.7%(前月:▲0.3%)と前月からプラスに転じて非耐久財消費全体を押し上げた。

サービス消費は、金融サービスが+0.9%(前月:+0.3%)と前月から伸びが加速したほか、医療サービスが+0.4%(前月:▲0.1%)、輸送サービスが+0.4%(前月:▲0.3%)と前月からプラスに転じた。また、住宅・公共料金が+0.4%(前月:+0.4%)と前月並みの伸びとなった。一方、娯楽サービスが+1.1%(前月:+1.3%)と堅調ながら前月から伸びが鈍化したほか、外食・宿泊が▲1.0%(前月:+0.5%)と前月からマイナスに転じるなど、マチマチの結果となった。

5.価格指数:エネルギー価格は前月比でプラスを維持も、前年同月比ではマイナス転換

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が+0.1%(前月:+1.3%)と前月からプラス幅は縮小したものの、4ヵ月連続のプラスとなった(図表6)。一方、食料品価格指数は▲横這い(前月:+0.3%)とこちらは小幅ながら24年4月以来10ヵ月ぶりのマイナスに転じた。

前年同月比は、エネルギー価格指数が▲1.1%(前月:+1.0%)と前月からマイナスに転じた(図表7)。食料品価格指数は+1.5%(前月:+1.6%)と前月からプラス幅は縮小したものの、17年6月以降はプラス圏で推移している。

経済研究部   主任研究員

窪谷 浩(くぼたに ひろし)

研究領域:経済

研究・専門分野
米国経済

経歴

【職歴】
 1991年 日本生命保険相互会社入社
 1999年 NLI International Inc.(米国)
 2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
 2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
 2014年10月より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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