パワーカップル世帯の動向-2024年で45万世帯に増加、うち7割は子のいるパワーファミリー

2025年03月24日

(久我 尚子) ライフデザイン

1――はじめに~増加傾向のパワーカップル・パワーファミリー、数は少ないが消費のけん引役として注目

若い世代で共働きが一般的になりつつある中で、夫婦ともに高収入のパワーカップル1(夫婦ともに年収700万円以上の共働き夫婦)が増加傾向にある。世帯数としては2024年で45万世帯に達し(総世帯の約1%、共働き世帯の約3%2)、消費者全体からすればニッチな層にも見えるものの、不動産市場をはじめとする消費の牽引役として知られている。特に、パワーカップルの約7割は子育て世帯でもあり、パワーファミリーとして不動産に加え、教育や旅行など幅広い領域での消費が注目されている。物価高で個人消費が低迷する中、活発な消費者層としても期待が寄せられる。

これまでも定期的にパワーカップル世帯の動向について分析しているが3、本稿では、あらためて統計の最新値を用いて、まず総世帯の所得分布の全体像などを捉えた上で、共働き世帯であるパワーカップル世帯の動向に注目する。
 
1 一定の裁量を持つ年収水準であることや所得税の税率区分などを考慮し、夫婦ともにおおむね年収700万円以上と定義。
2 総務省「令和6年労働力調査」にて夫婦共に年収700万円以上の世帯は45万世帯、夫婦ともに就業者の世帯は1,553万世帯、厚生労働省「令和5年国民生活基礎調査」にて総世帯は5,445万世帯
3 久我尚子「パワーカップル世帯の動向-2023年で40万世帯、10年で2倍へ増加、子育て世帯が6割」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レポート(2024/4/19)など。

2――世帯の所得分布

2――世帯の所得分布~年間平均所得は524万円、1,200万円以上は6.8%、南関東や都市部で多い

厚生労働省「令和5年国民生活基礎調査」によると、総世帯の年間平均所得金額は524.2万円、中央値は405万円である4。パワーカップルが含まれる高所得世帯に注目すると、1,200~1,500万円未満は全体の3.6%(169万世帯)、1,500~2,000万円未満は1.9%(88万世帯)、2,000万円以上は1.3%(59万世帯)を占める(図表1)。

地域別に見ると、1,200万円以上の世帯は南関東(35.1%)や近畿(13.6%)、東海(13.0%)で多く、これらの3地域で約6割を占める(図表2)。また、都市規模別に見ると、1,200万円以上の世帯は大都市(政令指定都市と東京23区)が31.6%、人口15万人以上の市が31.3%、人口15万人未満の市が30.1%、郡部が7.0%を占め、高所得世帯は郡部と比べて都市部で多い(図表略)。よって、パワーカップルやパワーファミリーも南関東を中心とした都市部に多く居住していると見られる。
 
4 厚生労働省「国民生活基礎調査」における所得は収入から給与所得控除額や経費等を除いた金額を捉えた統計だが、次節以降で用いる総務省「労働力調査」では収入を捉えたものとなっている。

3――パワーカップル世帯の動向

3――パワーカップル世帯の動向~10年で2倍、2024年で45万世帯、うち7割は子のいるパワーファミリー

1|共働き夫婦の年収分布~妻が高収入であるほど夫も高収入、ただし扶養控除枠を意識して働く妻も
次に、パワーカップルを含む共働き世帯の状況を確認する。総務省「令和6年労働力調査」によると、夫婦共に就業者の世帯(以下、共働き世帯)は1,553万世帯であり、総世帯(5,445世帯5)の28.5%を占める。

この共働き世帯について、妻の年収階級別に夫の年収階級の分布を見ると、妻の年収が高いほど、夫も年収も高い傾向がある(図表3)。パワーカップルの妻に該当する年収700万円以上では、夫も年収700万円以上の割合は約7割にのぼる。なお、妻の年収が1500万円以上の世帯において、夫の「収入なし」の割合の高さが目立つようだが、妻の年収が1500万円以上の世帯数は限られており(5万世帯)、統計の公表値の集計単位が1万世帯であるため、収入階級ごとの世帯数の統計処理の影響が出やすいことを考慮する必要がある。

一方、年収200万円未満を除くと、妻の年収が低いほど夫も相対的に年収が低い傾向がある。以前から指摘されている6ことだが、統計からも世帯間の経済格差の存在がうかがえる。

一方、妻の年収300万円未満(収入無しを除く)では、妻の年収が低いほど夫の年収が500万円以上の割合がやや高まる傾向がある。夫の年収500万円以上の割合は、妻の年収200万円~300万円未満では42.8%だが、100万円~200万円未満では44.2%、100万円未満では46.6%へとやや上昇する。この背景としては、夫が一定程度の年収を得ているため、妻自身の収入を増やすよりも家庭を重視した働き方を選択したり、夫の扶養控除枠を意識して働く妻が増えることなどがあげられる。
 
5 厚生労働省「国民生活基礎調査(2023年)」
6 橘木俊詔・迫田さやか著「夫婦格差社会-二極化する結婚のかたち」(中公新書、 2013年)

生活研究部   上席研究員

久我 尚子(くが なおこ)

研究領域:暮らし

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴

プロフィール
【職歴】
 2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
 2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
 2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
 2021年7月より現職

・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

【加入団体等】
 日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
 生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

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