マンションと大規模修繕(6)-中古マンション購入時には修繕・管理情報の確認・理解が大切に

2025年03月19日

(渡邊 布味子) 不動産市場・不動産市況

■要旨

マンションの大規模修繕を含む管理運営を考えるうえで、建築費の上昇は悩ましい問題の一つである。なかでも職人の高齢化や働き方改革などに伴う人手不足と労務コストの上昇は避けがたく、建築費の上昇は今後も続くことが予想される。
 
さらに、2027年から2035年にかけて大規模修繕を迎えるマンションが増加し、工事費の上昇を招くリスクも懸念される。修繕積立金が不足し、計画の先送りを余儀なくされるケースも増える可能性がある。
 
このように、大規模修繕費の上昇が見込まれるなか、中古マンションの購入者は事前に修繕計画や管理情報を入手し、その内容を十分に理解したうえで、意思決定することが大切になる。マンション購入後間もなく、2回目の大規模修繕工事を迎える可能性もあり、将来的なリスクを見極めて、許容できないリスクがある場合は、購入を見送ることも検討すべきではないだろうか 。
 
もっとも、修繕・管理に関する情報がマンションの売買価格に十分反映されているとは言い難い。今後、中古マンションの取引が増加するなかで、修繕計画や管理状況の良し悪しに関する情報は買い手の重要な判断基準の1つとなる。マンションの所有者や管理組合は資産価値の維持に向けて、計画的な修繕を実施し、積立金などの資金管理を行い、分かりやすい情報提供に努める必要がある。中古マンションを購入する人は、修繕計画や管理情報について、必要な情報を確認・理解することが、より大切になるだろう。

■目次

1.建築費の上昇は今後も続くことが予想される
2.工事時期の集中で、大規模修繕費がさらに上昇する可能性
3.中古マンション購入は修繕計画・管理の情報を事前に入手し、理解し、判断を
4.中古マンションの資産価値は、修繕・管理情報がより重要に

金融研究部   准主任研究員

渡邊 布味子(わたなべ ふみこ)

研究領域:不動産

研究・専門分野
不動産市場、不動産投資

経歴

【職歴】
 2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
 2006年 総合不動産会社に入社
 2018年5月より現職
・不動産鑑定士
・宅地建物取引士
・不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員

・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員

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