ホテル市況は一段と明るさを増す。東京オフィス市場は回復基調強まる-不動産クォータリー・レビュー2024年第4四半期

2025年02月12日

(佐久間 誠) 不動産市場・不動産市況

4.J-REIT(不動産投信)市場

2024年第4四半期の東証REIT指数(配当除き)は9月末比▲4.2%下落した。業種別指数では、オフィスが▲3.5%、住宅が▲8.1%、商業・物流等が▲3.8%の下落となった(図表-16)。国内外の長期金利が上昇基調で推移したことや、需給面では海外投資家が再び売り姿勢に転じたこともマイナスに寄与した。12月末時点のバリュエーションは、純資産12.1兆円に保有物件の含み益5.7兆円を加えた17.8兆円に対して時価総額は14.3兆円でNAV倍率5は0.80倍、分配金利回りは5.1%、10年国債利回りに対するイールドスプレッドは4.0%となっている。
J-REITによる第4四半期の物件取得額(引渡しベース)は2,313億円(前年同期比+16%)、2024年累計では1兆3,446億円(前年比+22%)となり2年連続で1兆円を上回った。アセットタイプ別の取得割合は、ホテル(26%)・住宅(24%)・オフィス(21%)・物流施設(18%)・商業施設(7%)・底地ほか(3%)となり、インバウンド需要拡大への期待からホテルの比率(19%→26%)が高まる一方で、前年トップであったオフィスの比率(33%→21%)が低下した(図表-17)。
2024年のJ-REIT市場を振り返ると、東証REIT指数は▲8.5%となり3年連続で下落した(図表-18)。日銀の金融政策正常化に伴う市場金利の上昇や、J-REIT特化型投信からの資金流出を受けて年間を通じて弱含みで推移。東京オフィス市場が賃料上昇に向かうなど不動産ファンダメンタルズは堅調であったが、J-REIT市場は閉塞感の強い1年となった。市場規模については、3年連続で新規上場がなく、1件の合併によって上場銘柄数は57社に、市場時価総額は14.3兆円(前年比▲7%)に減少した。一方、運用資産額(取得額ベース)はホテルや住宅の取得が伸びて23.6兆円(前年比+3%)に拡大した。続いて、業績面では、不動産賃貸収益の回復や不動産売却益の計上が寄与し、市場全体の1口当たり予想分配金は前年比+8%増加し、1口当たりNAVも保有不動産の価格上昇を反映して+2%増加した。また、投資法人債の発行金額は677億円(前年比+8%)で、平均発行利率は1.34%(2023年0.81%)と前年実績から大きく上昇した。
 
5 NAV倍率は、市場時価総額がリートの解散価値(NAV:Net Asset Value)の何倍で評価されているかを表わす指標。
 
 

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金融研究部   主任研究員

佐久間 誠(さくま まこと)

研究領域:不動産

研究・専門分野
不動産市場、金融市場、不動産テック

経歴

【職歴】  2006年4月 住友信託銀行(現 三井住友信託銀行)  2013年10月 国際石油開発帝石(現 INPEX)  2015年9月 ニッセイ基礎研究所  2019年1月 ラサール不動産投資顧問  2020年5月 ニッセイ基礎研究所  2022年7月より現職 【加入団体等】  ・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター  ・日本証券アナリスト協会検定会員

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