トランプ2.0とEU-促されるのはEUの分裂か結束か?-

2025年01月17日

(伊藤 さゆり) 欧州経済

■要旨

第2期トランプ米政権(トランプ2.0)の政策は2025年のグローバルな経済・金融政策の見通しの不確実性を高める最大の要因だ。

EUと米国の安全保障、貿易・投資を通じた結びつきは強く、バイデン政権とは、対ロシア制裁、ウクライナ支援、中国リスクの軽減(デリスキング)で共同歩調をとってきた。トランプ2.0の政策転換は、EUに直接的・間接的にさまざまな影響を及ぼす見通しである。米国に比べて停滞が目立つ欧州経済をさらに下押しし、各国の内政の混迷やEU内の対立をエスカレートさせ、EUの分裂を促すリスクも懸念される。他方で、過去の経験から、トランプ2.0という危機はEUの結束を促すという見方もある。

EUではトランプ2.0よりも一足早い24年12月1日に第2期フォンデアライエン体制(VDL2.0)が始動した。

本稿では、トランプ2.0の予想される政策への欧州の対応や影響を概観した上で、VDL2.0のEUの進路と日本への示唆について考察する。

■目次

1――はじめに
2――トランプ2.0の政策への欧州の対応、影響
  1|安全保障
  2|政治・外交
  3|通商
  4|気候変動・エネルギー
  5|税制改革
  6|移民
3――VDL2.0のEU
  1|VDL2.0のEUの指針
  2|独仏政府不安でもEUの「危機バネ」は働くか?
  3|「ブリュッセル効果」はどうなるか?
4――おわりに−日本への示唆

経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり(いとう さゆり)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

経歴

・ 1987年 日本興業銀行入行
・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
・ 2023年7月から現職

・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
・ 2017年度~ 日本EU学会理事
・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
           「欧州政策パネル」メンバー
・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員

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